S&P グローバルは、債券発行活動がレーティング部門を好調に維持し、インデックス部門がパッシブ運用フィーの流入加速を取り込むなか、またしても広範な成長を達成した四半期となった。2026年6月30日終了の3カ月間において売上高は10.4%増の$4,146 million、営業利益は16.8%増の$1,812 million、調整後希薄化後EPSは23.2%増の$4.83と、いずれも前年同期を大幅に上回り、通期業績ガイダンスのさらなる引き上げに至った。また今回の結果は、モビリティ部門の終章ともなる。同自動車データ部門は2026年7月1日付でS&P グローバルから正式に分離されるため、5部門が一堂に揃う最後の四半期報告となる。
1. 損益計算書サマリー
1-1. 売上高・営業利益・EPS
| 指標 | Q2 2025 | Q2 2026 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | $3,755M | $4,146M | +10.4% |
| 営業利益 | $1,551M | $1,812M | +16.8% |
| 純利益(SPGI帰属分) | $1,072M | $1,217M | +13.5% |
| GAAP 希薄化後EPS | $3.50 | $4.12 | +17.7% |
| 調整後希薄化後EPS(非GAAP) | $3.92 | $4.83 | +23.2% |
| 希薄化後発行済株式数 | 306.1M | 295.5M | -3.5% |
上半期の結果もこのトレンドを裏付けている。2026年上半期の売上高は$8,318 million(+10.4%)、上半期営業利益は$3,814 million(+21.9%)、上半期調整後EPSは$9.27(+18.5%)に達した。
GAAP EPSの成長率(+17.7%)と調整後EPSの成長率(+23.2%)の乖離は、非GAAP指標から買収関連の償却費、リストラクチャリングコスト、およびその他一定の項目が除外されていることを反映している。希薄化後発行済株式数は前年比3.5%減の295.5 million株に低下しており、純利益成長を上回るEPSの超過パフォーマンスのおよそ半分は、この株式数の減少によってもたらされている。
2. セグメント別業績
2-1. セグメント別売上高
| セグメント | 2025年Q2売上高 | 2026年Q2売上高 | 前年比 | 2026年上半期 | 上半期前年比 |
|---|---|---|---|---|---|
| レーティング | $1,148M | $1,339M | +17% | $2,641M | +15% |
| マーケット・インテリジェンス | $1,217M | $1,290M | +6% | $2,586M | +7% |
| コモディティ・インサイツ | $555M | $568M | +2% | $1,221M | +5% |
| モビリティ | $438M | $468M | +7% | $921M | +7% |
| インデックス | $446M | $534M | +20% | $1,053M | +18% |
2-2. セグメント別営業利益および利益率
| セグメント | 2025年Q2利益 | 2026年Q2利益 | 前年比 | 2026年Q2利益率 | 2025年Q2利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| レーティング | $715M | $913M | +28% | 68% | 62% |
| インデックス | $309M | $373M | +21% | 70% | 69% |
| コモディティ・インサイツ | $233M | $233M | 横ばい | 41% | 42% |
| マーケット・インテリジェンス | $259M | $293M | +13% | 23% | 21% |
レーティング部門は最も急激な利益改善を達成した。売上高17%増を背景に営業利益が28%急伸し、利益率は62%から68%に上昇した。リファイナンス活動の活発化と社債供給の継続を受け、グローバルの債券発行は引き続き堅調に推移した。投資適格債および高利回り債の発行がともに貢献した。
インデックス部門(S&P 500およびダウ・ジョーンズのライセンス・フランチャイズを擁するセグメント)は、最も高い売上高成長率(+20%)と最高の利益率(70%)を記録した。S&Pダウ・ジョーンズ指数をベンチマークとする運用資産残高は株式市場の動向とともに拡大しており、2026年上半期の株式市場は総じてプラスの推移となった。S&Pベンチマークに連動する上場投資商品の手数料率も底堅く推移した。
マーケット・インテリジェンス部門は、サブスクリプション基盤のコスト効率化が奏功し、上半期の利益率改善幅が最も大きかった(20%→28%)。バイサイドおよびセルサイドのクライアントに信用格付けデータ、財務アナリティクス、デスクトッププラットフォームを提供する同部門の売上高は、Q2に6%、上半期では7%増加した。
コモディティ・インサイツ部門(プラッツのエネルギー・コモディティ情報事業を改称)のQ2売上高成長率はわずか2%にとどまり、営業利益は前年並みであった。同部門は緩やかなオーガニック成長を達成しているものの、比較基準の厳格化や、トランザクション収益を圧迫するエネルギー価格ボラティリティの低下という逆風に直面している。
モビリティ部門は、連結セグメントとしての最終四半期に4億6,800万ドル(+7%)の売上高を計上した。2026年7月1日付で独立した新会社に売却された同自動車データ・ソリューション事業は、分離の準備が進む中、安定したキャッシュ貢献源として機能した。
3. モビリティ部門の分離
2026年7月1日に完了したモビリティ・セグメントの正式分離は、本報告期間における最も重要な構造的イベントである。2022年のIHSマークイットとの合併により取得した同事業は、車両登録データ、アフターマーケット分析、ディーラー在庫ソリューションを手がける。S&Pグローバルの経営陣は、モビリティ部門が自動車サプライチェーンへの戦略的特化において、中核的な金融情報・アナリティクス事業と十分に異なると判断し、独立した組織構造を設ける意思決定に至った。
第2四半期の貸借対照表は、分離に向けた準備を反映している。手元現金は2025年12月31日時点の$1,745百万から2026年6月30日時点の$4,134百万へと急増し、$2,389百万の増加となった。これにはスピンオフに関連した増資による収入や企業間精算の収入が含まれている可能性が高い。2026年第3四半期からS&P グローバルは、レーティング、マーケット・インテリジェンス、コモディティ・インサイツ、インデックスの4セグメント体制で報告を行う。
4. 貸借対照表と資本配分
4-1. 主要貸借対照表項目(2026年6月30日時点)
| 項目 | 2025年12月31日 | 2026年6月30日 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 現金および現金同等物 | $1,745M | $4,134M | +$2,389M |
| 短期借入金 | — | $2,572M | — |
| 長期借入金 | $12,370M | $12,598M | +$228M |
| 有利子負債合計 | — | $15,170M | — |
4-2. 株主還元
| 項目 | 2025年上期 | 2026年上期 | 2026年通期目標 |
|---|---|---|---|
| 自社株買い | $1,314M | $1,517M | >$7,000M |
| 1株当たり配当金 | $1.92 | $1.94 | — |
自社株買いは第2四半期だけで$500百万、上期累計では$1,517百万に達した。上期の買い戻しペースに基づくと、年間$70億超という目標は下期に大幅な加速を示唆しており、これは株式数の削減を最優先の資本配分事項とする経営陣のコメントとも一致している。
フリー・キャッシュ・フローの創出もこの方針を後押しする。2026年上期の営業キャッシュ・フローは$2,476百万に達した一方、設備投資はわずか$65百万にとどまり、上期のフリー・キャッシュ・フローは$2,411百万近くに上ることが示唆される。
5. 2026年通期ガイダンス
| 指標 | FY2026ガイダンス(2026年7月28日更新) |
|---|---|
| オーガニック収益成長率(固定為替レートベース) | 5.9% – 7.9% |
| GAAP希薄化後EPS | $16.35 – $16.60 |
| 調整後希薄化EPS(非GAAP) | $17.50 – $17.75 |
| GAAP営業利益率の改善幅 | 前年比+335〜+360 bps |
| 設備投資 | $190M – $210M |
| 純利息費用 | $365M – $385M |
調整後EPSレンジの$17.50〜$17.75は、従来のガイダンス中央値を大幅に上回る水準にある。上期の調整後EPSがすでに$9.27に達していることから、同社はレンジを達成するために下期に$8.23〜$8.48を稼ぐ必要がある。これは下期が上期比でほぼ横ばい〜やや増加に留まることを示唆しており、レーティング事業では第3・第4四半期に年末リファイナンスの案件増加という季節的恩恵があることを考えると、保守的な見通しと言える。
6. 投資上の考慮事項
強気論を支える要因。レーティング事業の債券発行への感応度と、インデックス事業のパッシブ運用AUMへの感応度の組み合わせは、金融市場の活況に対するナチュラルなエクスポージャーを生み出している。いずれも2026年上期は追い風となった。継続中の自社株買い(発行済み株式2億9,500万株に対して売上高の10〜11倍という水準での年間$70億超の目標)は、株式数の削減を続けており、純利益の総額が想定通りにとどまる四半期においても、1株当たり利益の成長を支えている。
モニタリングすべきリスク。クレジット市場の活動は景気循環的な性質を持つ。投資適格債またはハイイールド債のスプレッドが急拡大すれば、新規発行が抑制され、レーティングのトランザクション収益は急速に落ち込む。マーケット・インテリジェントの営業利益率23%はセグメント開示部門の中で最も低く、収益の下ぶれを吸収する余地は限られている。コモディティ・インサイツ部門の第2四半期営業利益は前年同期比横ばいであり、エネルギー・データ市場での追加的な価格引き上げ余地が天井に近づいている可能性を示唆している。モビリティの分離は、SPGIの戦略的焦点を絞り込む一方で、分散効果をもたらしていた収益源を失わせることになる。
分離後の事業構造。2026年第3四半期以降、投資家はS&Pグローバルを4セグメントで評価することになる。レーティングとインデックスを合わせると、第2四半期のセグメント営業利益合計$18億1,200万のうち約87%、すなわち約$12億8,600万を占める。市場はSPGIを、債券発行量と株式ベンチマークの運用量が業績の行方を左右する「二本柱」企業としてますます評価するようになるだろう。
出所:S&P Global Inc. 2026年6月30日終了四半期のForm 10-Q(SEC EDGAR、2026年7月28日提出、受付番号0000064040-26-000045);S&P Global 2026年第2四半期決算プレスリリース、2026年7月28日提出Form 8-K(受付番号0000064040-26-000040)。