モデルナは四半期で黒字に戻ったが、資金不足は解消していない
モデルナはメッセンジャーRNAを使ったワクチンを、主に販売業者や政府に販売する。欧州への新型コロナワクチンの納入と研究費の減少により、2026年第3四半期の営業利益は1億3,000万ドルとなった。一方、最初の9カ月には、多額の特許和解金の支払いもあり、事業活動で27億1,500万ドルの現金を使った。新たな借り入れで、モデルナはがん治療法の開発を進める時間を得た。今後はワクチン事業が、その開発を支えるだけの現金を生み出す必要がある。
分析対象期間:2026年7月~9月。1月~9月の比較も含む。調査の締め切り:2026年11月7日(ニューヨーク時間)。確認した最新の会社決算発表:11月6日。
出典:モデルナの2026年第3四半期のフォーム10-Q、連結財務諸表、7、11ページ。経営陣による説明、38~43ページ。
1. 欧州への納入で売上高が回復したが、中心は依然として新型コロナワクチン
四半期のワクチン売上高の増加分は、ほぼすべて欧州から生じた。モデルナは政府との長期提携に基づき、新型コロナワクチンの納入を増やした。米国でのワクチン売上高は前年同期をわずかに下回ったが、これらの契約が売上高の増加を支えている。
地域別の比較から、どこで売上高が回復したかが分かる。示しているのは各地域の顧客への売上高であり、接種を受けた人数ではない。
| 製品売上高(純額、百万米ドル) | 2025年第3四半期 | 2026年第3四半期 | 2025年最初の9カ月 | 2026年最初の9カ月 |
|---|---|---|---|---|
| 米国 | 782 | 771 | 901 | 914 |
| 欧州 | 16 | 314 | 16 | 569 |
| その他の地域 | 175 | 188 | 255 | 236 |
| 合計 | 973 | 1,273 | 1,172 | 1,719 |
四半期の増加額3億ドルのうち、欧州が2億9,800万ドルを占めた。9カ月間でも、欧州の伸びがその他の地域での減少を補った。モデルナにとって欧州は、より大きな売上源になった。ただし、この数字だけでは、すべての市場で接種需要が広く回復したとはいえない。
出典:2026年のフォーム10-Q、注記3、15ページ。経営陣による説明、38ページ。地域別の増加額は公表値から算出。
政府との提携では、ワクチンを製造できるよう工場を準備しておくことに対しても、モデルナに支払いがある。この製造待機に対する収入は、9カ月間で4,900万ドルから9,400万ドルに増え、製品売上高とは別に計上される。英国との10年間の提携は、その目的を示している。国内での生産と、パンデミックへの対応能力を支える契約だ。モデルナは納入したワクチンの代金に加え、製造できる体制を維持する対価も受け取る。その体制の維持には費用もかかる。
出典:2026年のフォーム10-Q、注記4、16ページ、および経営陣による説明、38ページ。2025年のフォーム10-K、注記4「製造待機に対する収入」。モデルナによる英国の製造施設の説明、2026年3月27日。
製品別に見ると、売上高はなお一部の製品に集中している。スパイクバックスとmNEXSPIKEの売上高は12億4,400万ドルで、四半期の製品売上高の97.7%を占めた。RSウイルス感染症(RSV)向けワクチンのmRESVIAは200万ドルから2,900万ドルに増えたが、規模はまだ小さい。新しいインフルエンザワクチンのmFLUSIVAは9月の発売後、売上高への寄与はごくわずかだった。インフルエンザと新型コロナの混合ワクチンは9月30日時点で販売が始まっていなかった。承認済みの5製品は、現在の売上高を支える製品よりも幅広い将来の品ぞろえを示している。
出典:2026年のフォーム10-Q、注記1、3、12、15ページ。新型コロナワクチンの割合は、12億4,400万ドルを12億7,300万ドルで割って算出。
2. 研究費の削減で四半期は黒字に戻ったが、年初からの累計は赤字
四半期の黒字回復には、研究費の削減が欠かせなかった。四半期の売上高は29.2%増え、研究開発費は27.2%減った。この二つを合わせた効果が、製造費用と管理費の増加を上回った。
| 連結業績(百万米ドル) | 2025年第3四半期 | 2026年第3四半期 | 2025年最初の9カ月 | 2026年最初の9カ月 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,016 | 1,313 | 1,266 | 1,847 |
| 売上原価 | 207 | 318 | 416 | 1,366 |
| 研究開発費 | 801 | 583 | 2,357 | 1,883 |
| 販売費・一般管理費 | 268 | 282 | 710 | 671 |
| 営業利益/(損失) | (260) | 130 | (2,217) | (2,073) |
| 純利益/(損失) | (200) | 162 | (1,996) | (1,963) |
営業利益は、運用収益、借入費用、税金を反映する前の事業の損益だ。モデルナは四半期の売上高9.9セント相当を営業利益として残した。前年同期は売上高25.6セント相当の営業損失だった。運用収益によって純利益は営業利益を上回ったが、受取利息は減り、借入費用は増えた。
出典:2026年のフォーム10-Q、連結損益計算書、7ページ。経営陣による説明、39~40ページ。利益率は売上高全体を使って算出。
経営陣は、複数の大規模なワクチン試験が終了または縮小に向かうなか、研究予算を選んだ開発計画に集中させている。インフルエンザと新型コロナの混合ワクチン、RSV、ノロウイルスなどの試験費用が減り、従業員や外部サービスにかかる費用も減った。一方、9カ月間では、がん治療の研究と、新型コロナワクチンの承認後に必要な試験が削減分を一部相殺した。費用の減少には、続けている研究の支出を抑えたことに加え、開発対象を絞ったことも反映されている。
資金提供に関する見積もりの変更も、この四半期の利益を押し上げた。モデルナは、ブラックストーンとのインフルエンザワクチン開発契約で以前の見積もりを見直し、3,300万ドルの利益増加を計上した。これは報告された営業利益のおよそ1四半分に当たる。毎四半期繰り返されるとは見込めない。それでも、研究費の削減がこの見直しだけによるものではないことは、9カ月間の比較でも確かめられる。ブラックストーンからの資金提供による費用の相殺額は2億7,400万ドルから1億4,300万ドルに減ったが、研究開発費は20.1%減少した。
出典:2026年のフォーム10-Q、注記5、17ページ。経営陣による説明、39ページ。
製造に関する数字がすべて改善したわけではない。四半期の売上原価は、製品売上高と製造待機に対する収入の合計に対し、20.8%から24.4%に上がった。モデルナは主な理由として、販売量の増加と、使われていない製造能力にかかる費用の増加を挙げた。また、ほかの費用を抑えたものの、法務費用が増えて一般管理費は上がった。したがって、利益の回復には、製造以外でどの費用を使うかという判断も関わっている。事業全体で一様に収益性が改善したわけではない。
出典:2026年のフォーム10-Q、経営陣による説明、39~40ページ。費用の割合は、モデルナが開示した収入の範囲を使い、端数処理前の数値から算出。
さらに長い期間で比べても、その点が分かる。2024年第3四半期の売上高は18億6,200万ドル、研究開発費は11億3,700万ドルだった。2026年の同じ四半期には、売上高はその水準をなお29.5%下回っていたが、研究開発費は5億8,300万ドルまで減った。モデルナは新型コロナワクチンの売上高が縮小した後、より小さな費用規模で事業を運営しつつある。一方、売上高は以前の規模に戻っていない。
出典:2025年第3四半期のフォーム10-Q、損益計算書、6ページ。2024年第3四半期の比較数値を含む。2026年のフォーム10-Q、7ページ。
最初の9カ月を見ると、黒字だった四半期ほど業績は良くない。3月のアービュータス、ジェネバントとの特許を巡る和解で、8億7,600万ドルの費用が直ちに生じた。この費用だけを除けば、事業の損益がどう改善したかを見やすくなる。継続するライセンス費用の償却と、そのほかに報告された費用は比較に残している。
| 和解費用の比較(税引き前、百万米ドル) | 2025年最初の9カ月 | 2026年最初の9カ月 |
|---|---|---|
| 報告された営業損失 | (2,217) | (2,073) |
| 当初のアービュータス/ジェネバント和解費用を加算 | 0 | 876 |
| 当初費用を除く営業損失(計算値) | (2,217) | (1,197) |
計算上の注記:これは当初の和解費用だけを調整した米国会計基準外の比較であり、継続的に得られる利益の見積もりではない。2026年の計算には、1,400万ドルのライセンス費用の償却を残している。これは購入した特許権の費用を、使える期間に分けて計上するものだ。在庫に関する損失、株式による報酬、資金提供による利益増加、その他の報告済み項目も残している。計算は税引き前の営業損益を対象とし、税負担が減るとの仮定は置いていない。
このように対象を絞って計算しても、モデルナにはなお多額の損失が出た。全体では赤字だったが、3,300万ドルの税金費用も計上した。一部の海外子会社には課税対象の利益が出た一方、ほかの事業で生じた損失については、将来の税負担を減らす効果の大半を計上できなかった。和解費用の調整に一律の税率を当てはめると、この扱いが見えにくくなる。
出典:2026年のフォーム10-Q、損益計算書、7ページ。注記12、14、28~31ページ。
3. 売上の計上が顧客からの入金に先行し、現金の流出が高止まり
売上高が増えたにもかかわらず、9カ月間の営業活動による現金流出はわずかしか改善しなかった。モデルナは、顧客がまだ支払っていない売上を以前より多く計上した。特許和解金も支払い、呼吸器感染症が流行する季節に向けてワクチンの在庫を積み増した。
顧客に対する債権の純額は、年末の1億8,400万ドルから13億6,700万ドルに増えた。純額とは、値引きなどを差し引いた後に受け取る見込みの金額だ。キャッシュフロー計算書によると、債権の増加によって11億8,400万ドルの現金がまだ回収できていなかった。2025年最初の9カ月では7億300万ドルだった。開示資料が示す問題は回収の時期にある。計上した売上が、研究費や請求書の支払いに使える現金にはまだなっていなかった。
出典:2026年のフォーム10-Q、貸借対照表、6ページ。キャッシュフロー計算書、11ページ。注記9、22ページ。経営陣による説明、41~42ページ。
販売業者は通常、モデルナに前払いしないが、一部の政府などとの契約では前払いがある。キャッシュフロー計算書には、顧客からの前受金の変動による1億6,000万ドルの現金増加が計上された。これが、売上代金の回収の遅れと、在庫の積み増しに使った1億5,900万ドルを一部補った。売上計上前に受け取った、または請求できる代金の残高は4億700万ドルに達したが、モデルナには対応する製品やサービスを提供する義務が残っている。
| 現金収支と投資、百万米ドル | 2025年の最初の9カ月 | 2026年の最初の9カ月 |
|---|---|---|
| 営業活動による現金収支 | (2,803) | (2,715) |
| 設備などの購入に支払った現金 | 153 | 146 |
| フリーキャッシュフロー、計算値 | (2,956) | (2,861) |
| 無形資産の購入に支払った現金 | 10 | 74 |
| 両方の投資後に残る現金、計算値 | (2,966) | (2,935) |
計算上の注記:ここでいうフリーキャッシュフローは、営業活動による現金収支から設備などの購入に支払った現金を差し引いたもの。支出の行は、差し引く額を正の値で示している。最終行では無形資産の購入額も差し引く。有価証券の売買と資金調達は含めない。
出典:2026年のForm 10-Q、キャッシュフロー計算書、11ページ;注記9、24ページ;経営陣による説明、41~42ページ。
9億5,000万ドルの和解金は7月に支払われた。このうち8億7,600万ドルは第1四半期にすでに計上した費用に対応し、7,400万ドルは特許権の取得に充てられ、投資活動による現金支出に含まれる。利益を比較する際にその費用を除いても、現金を支払った事実は変わらない。表には支払額の両方の部分がすでに含まれている。
売上高の見積もりは、最終的に回収する現金にも影響する。モデルナは四半期の製品売上高を値引き前で25億9,700万ドル計上し、契約上の値引き、手数料、返品見込み、払い戻しに対応する13億2,400万ドルを差し引いた。その結果が、上で報告した製品売上高の純額12億7,300万ドルとなる。請求書の総額は、モデルナが最終的に受け取ると見込む売上高を示すものではない。
9カ月の間に、モデルナは過去の販売分に対する返金などの手数料の見積額を5,900万ドル引き下げ、売上高を増やした。それでも、返品などに対して計上した債務は5億900万ドルから6億ドルに増えた。新たに見込んだ債務が、顧客との間で精算した額を上回ったためだ。販売代理店で売れ残った製品は返品される可能性があり、この見積もりは重要となる。提出書類では価格の影響と販売数量の影響が十分に分けられておらず、売上高の増加を価格改善によるものとは判断できない。
出典:2026年のForm 10-Q、注記3、15~16ページ、および注記12、28ページ。返品引当額の増減の照合は、下の計算上の注記に示す。
4. 新たな借り入れで資金を確保する一方、将来の多額の返済が生じる
転換社債による資金調達は、事業で使った現金の大部分を補った。経営陣によると、調達資金はがん治療への投資や借入金の返済に使う可能性がある。新しい治療法の発売を目指す間、資金の使い道に柔軟性が生まれる。ただし、この調達によって新たな返済義務も生じ、ワクチンの売上高はまだそれを賄っていない。
モデルナは9月に、株式に転換できる債券である転換社債を30億ドル発行した。発行費用4,300万ドルと、株式の追加発行による影響を抑える目的で購入したオプションの費用3億2,900万ドルを差し引くと、この取引で得た資金は26億2,800万ドルだった。現金、現金同等物、投資の合計は9月末に79億7,600万ドルとなり、前年末を下回った額は1億5,900万ドルにとどまった。合計額がほぼ横ばいだったのは資金調達によるもので、事業が必要な現金を自ら賄えていたからではない。
合計額のうち、現金と現金同等物は11億9,500万ドルだけだった。別に39億7,600万ドルを満期まで一年以内の有価証券に、28億500万ドルを満期まで1年超5年以内の有価証券に投資していた。保有する証券は主に国債と社債だ。これらは満期に資金を回収したり売却したりできる資産だが、売却額は市場の状況によって変わる。
出典:2026年のForm 10-Q、キャッシュフロー計算書、11ページ;注記6と11、18ページと26~27ページ;経営陣による説明、41ページ。
| 2026年9月30日時点の借入債務、百万米ドル | 返済すべき元本 | 契約上の満期 | 利息の条件 |
|---|---|---|---|
| 担保付き長期借入金 | 600 | 2030年11月24日 | 変動金利;9月30時点で約9.23% |
| 無担保転換社債 | 3,000 | 2032年3月1日 | 通常の利息なし;所定の条件下で特別利息の可能性あり |
長期借入金は満期まで元本を返済する必要がない。9月時点の金利で計算すると、6億ドルに対する年間利息は約5,500万ドルとなる。これには手数料や金利の変動を含めていない。転換社債には定期的な現金利息がないが、満期前に株式へ転換、償還、買い戻しが行われない限り、元本の支払義務は残る。モデルナは転換時に現金、株式、またはその両方で決済できる。一定の企業取引が起きた場合には、満期前に現金での買い戻しが必要になることもある。
このため、債務の返済は翌年よりも2030年と2032年に集中する。購入したオプションは、契約上の上限まで、元本を超える株式の追加発行や現金支払いの一部を相殺する仕組みだ。元本の返済義務は残る。会計上の帳簿価額が元本より低いのは、発行費用を債務の期間にわたって配分するためだ。
出典:2026年のForm 10-Q、注記11、26~27ページ。年間利息の額は計算例であり、予測ではない。
貸し手は、モデルナがまだ引き出していない追加資金9億ドルの提供も約束している。最初の4億ドルは条件を満たせば2027年11月まで利用できる。残りの5億ドルは2028年11月まで利用できるが、所定の規制上の節目を達成する必要もある。この融資は会社のほぼすべての資産を担保とし、追加の借り入れ、資産売却、一定の支払いを制限する。財務条件の確認が適用される場合、モデルナは毎週の確認日に、条件を満たす現金と有価証券を少なくとも5億ドル保有しなければならない。この契約に基づく借入額が10億ドルを超えると、最低額は7億5,000万ドルに上がる。直前30日間の株式時価総額の平均が50億ドルを超える場合、この確認は免除される。モデルナは9月30時点で条件を守っていると報告した。
施設や設備のリースにも現金が必要だ。契約上の残りの支払額は合計10億4,000万ドルで、うち2027年に支払う額は9,700万ドルだった。最新の年次報告書にある購入契約の支払予定額は、2025年12月31日時点で14億3,800万ドル。その後の一年以内に支払う額は4億8,100万ドルだった。四半期報告書には更新された購入予定表はなく、これらの契約に重要な変更はないと報告している。売上が期待を下回った場合、こうした契約はモデルナが支出をすぐに削減することを難しくする。将来必要な現金を見積もる際には、これらの支払いを一度だけ含める必要がある。
出典:2026年のForm 10-Q、注記10~11、25~27ページ、および「契約上の債務」、43ページ;2025年のForm 10-K、契約上の債務の表、96ページ。年次報告書の購入額は過去の時点での契約上の支払予定額であり、9月時点の残高ではない。
損失により、負債を差し引いた後に残る資産を示す会計上の株主資本は、86億5,000万ドルから68億3,700万ドルに減った。従業員向けの株式発行と株式報酬が損失の影響を一部相殺した一方、株式の希薄化を抑えるためのオプションは株主資本を減らした。モデルナはこの9カ月間、現金配当も自社株買いも行わなかった。従業員への株式報酬とオプション行使により、発行済み株式数は約394百万株から約404百万株に増えた。
株式や株式オプションで支払う報酬は株式報酬と呼ばれ、9カ月間で3億5,100万ドルだった。この期間に同額の現金支払いは必要なかったが、従業員への報酬の一部であり、株式数を増やす可能性がある。黒字だった四半期には、株式報酬と転換社債によって、希薄化後の一株当たり利益の計算に使う株式数が増えた。報告された希薄化後の一株当たり利益は$0.38で、基本的一株当たり利益の$0.40を下回った。この計算に含まれる潜在的な株式は、実際に発行された株式とは別だ。
出典:2026年のForm 10-Q、株主資本とキャッシュフローの計算書、9~11ページ;注記13と15、30ページと32ページ。株主資本と一株当たり利益の詳しい確認は下に示す。
5. 新ワクチンには工場の稼働を増やす受注が必要
ワクチンの種類が増えても、売れ残る在庫や使われない生産能力に伴う費用はまだ解消していない。モデルナは呼吸器感染症の流行期に先立って生産する必要があるが、最終的な受注数は不確かだ。製品を増やせば製造網をより活用できる可能性がある。ただし、承認を得ただけでは需要があるとはいえない。
1年を超えた後に使う見込みの原材料を含む在庫は、2億6,700万ドルから3億8,200万ドルに増えた。一年以内に使う在庫は増え、それより後に使う見込みの原材料は減った。モデルナは在庫に使った現金について、2026~2027年の流行期に向けた生産によるものと説明した。それでも、価値が下がった在庫について1億3,300万ドルを費用に計上した。前年の1億4,700万ドルと比べて減ったものの、過剰な数量、使用期限切れなどによる損失が生じた。確定した購入契約については、以前の2,400万ドルに対し、新たな損失を計上しなかった。損失の減少は前進だが、使われなかった生産能力に伴う費用5,400万ドルは残った。
出典:2026年のForm 10-Q、注記7、21ページ;経営陣による説明、39ページと42ページ。
モデルナは施設、製造・研究設備、コンピューターシステムなどの購入に、現金1億4,600万ドルを使った。設備などの帳簿価額は、減価償却が進んだことで21億3,400万ドルから20億3,600万ドルに減った。減価償却とは、過去の支出を、その設備などを使う年にわたって費用に配分することだ。現在の支出のうち、施設の維持に充てる額と拡張に充てる額は、モデルナは開示していない。
特許権など、費用を限られた使用期間にわたって配分する資産は、主に和解に伴うライセンスの取得により、4,500万ドルから1億200万ドルに増えた。そのライセンスの9月30時点の帳簿価額は6,000万ドルだった。事業上の利点は、将来の製品に対象技術を使えることだ。
出典:2026年のForm 10-Q、注記8~9と12、22~23ページと28ページ;投資活動に関する説明、42ページ。
mFLUSIVAには新たな受注を得る具体的な機会がある。米食品医薬品局(FDA)は8月に50歳以上の成人向けとして承認したが、モデルナが9月に発売した時点では、その流行期に向けた契約を決める時期が過ぎていた。このため、初めて実質的な販売成果を確かめられるのは、最初の四半期の売上高よりも、顧客が次に調達先を選ぶ際に受注できるかどうかだ。
臨床試験の比較結果は販売上の強みを示すが、対象には限りがある。FDAの製品表示に記載された50歳以上の成人を対象とする試験では、インフルエンザの発症が確認された割合は、mFLUSIVAを接種した人で2.0%、GSKの標準用量ワクチンを接種した人で2.8%だった。報告された相対的な有効性の改善は26.6%。この結果は、サノフィの高用量ワクチン「フルゾーン」に対しても同じ優位性があることを示すものではない。65歳以上への承認は免疫反応のデータに基づいており、効果を確認する臨床研究が引き続き必要だ。製品表示には、短期間の接種後の反応が標準用量ワクチンより頻繁だったことも記されている。モデルナはこうしたデータを、既存の競合製品に対抗する契約につなげる必要がある。
出典:2026年のForm 10-Q、注記3、15ページ、および事業の主な動き、34ページ;FDAのmFLUSIVA処方情報、2026年8月改訂、1節、6.1節、14節、特に表5。26.6%は相対的な比較結果であり、パーセントポイントの差ではない。
販売が進めば、開発パートナーへの支払いも生じる。mFLUSIVAの初販売を受け、ブラックストーンはインフルエンザワクチンと混合ワクチンの売上高の数パーセント未満に当たる割合を受け取る権利を得た。さらに、最大7億5,000万ドルの節目ごとの支払いも受けられる。これらの支払いは累計売上高が所定の水準に達することが条件だ。9月30時点で、モデルナはこれらの売上高に応じた支払いや節目ごとの支払いについて、債務を計上していなかった。この取り決めで開発上のリスクを分担した一方、将来のワクチン売上高の一部はこれらの支払いに充てられる。
インフルエンザと新型コロナの混合ワクチンも、欧州とカナダで承認され、売上高を得る別の道となる。米国での再申請については、FDAの指針をなお待っていた。ノロウイルス向けワクチンには開発の不確かさが表れている。大規模な第3相試験の中間解析は、早期に成功と判断する基準を満たさなかった。モデルナはその流行期に別の集団を登録する予定はなく、保健当局に助言を求めていた。このため、次の開発段階は決まっていなかった。費用の抑制と製品の拡充は、合わせて評価する必要がある。
出典:2026年のForm 10-Q、注記5、17ページ;事業の最新情報、34ページ。
6. がん治療の結果は追加投資を支えるが、費用と利益は分け合う
インティスメランの臨床上の根拠は強まったが、まだ開発中であり、売上高を生む製品ではない。この治療法は、患者一人ひとりの腫瘍の遺伝子変異に合わせて作られる。モデルナとメルクは、手術後にメルクの「キイトルーダ」と併用することで、がんの再発を防げるか試験している。
手術後の再発リスクが高い皮膚がん、ステージIIB~IVの悪性黒色腫を対象とした第3相試験では、併用療法により、がんの再発または死亡の発生率がキイトルーダ単独と比べて42%低下した。追跡期間の中央値は24.6カ月だった。メルクが10月22に公表した資料には、より分かりやすい比較もある。2年後に生存し、再発もしていない人の推定割合は、併用療法で82.2%、キイトルーダ単独で70.0%で、差は12.2パーセントポイントだった。
最初の6カ月間には効果が明確に表れていなかった。患者の全体的な生存期間が延びるかを確かめるには、さらに長い追跡が必要だ。それと並行して承認を求めることは、今回の結果に裏付けられている。モデルナとメルクは申請と、承認された場合の発売に向けて作業を進めていた。
出典:2026年のForm 10-Q、事業の主な動き、33ページ;メルクとモデルナによる第3相試験の公表資料、2026年10月22日、「試験設計と追加データ」;モデルナの11月6付結果発表、がん治療に関する最新情報。42%という数値は、ハザード比0.58から算出したもの。2年後の割合の差は別の計算による。
提携により、モデルナが負担する費用は減り、将来得る可能性のある利益も分け合う。契約上の例外を除き、開発費用と利益または損失は世界全体で原則として折半する。モデルナは主に製造工程の開発と製造を担い、メルクは通常、臨床試験を主導する。モデルナが9カ月間に計上した提携費用は、メルクからの払い戻しを差し引いて2億9,300万ドルだった。前年は3億400万ドルだった。この差し引き後の費用を、共同開発全体の費用とみなすべきではない。
出典:2026年のフォーム10-Q、注記5、16ページ。
患者ごとに設計した製造分が必要なため、製造は事業化の中心となる。モデルナが専用に建設したマールボロ工場は、9月2025に臨床用の患者別製造分の出荷を始めた。これにより操業経験を積んでいるが、販売を始めるには、必要な承認を得て、より大きな規模でも確実に届ける必要がある。
事業上の機会は、季節性の呼吸器ワクチン以外にも収益源を増やすことにある。鍵となるのは、承認、患者ごとの製造の成功、そして代金を伴う治療需要だ。現時点の結果は追加投資を裏付けるが、発売日、販売価格、モデルナの利益への貢献はまだ示していない。
出典:2025年のフォーム10-K、「製造」、22~23ページ;2026年のフォーム10-Q、注記5および事業の主な進展、16ページ、33~35ページ。
7.特許を巡る和解で一部の不確実性は減ったが、大きな支払いの可能性は残る
特許を巡る和解によって、将来の金銭請求がすべてなくなったわけではない。ArbutusとGenevantとの合意は世界各地の紛争を解決し、感染症分野のライセンスについて、今後両社にロイヤルティーを支払わずに済むようにした。これは既存および将来のワクチン製品に役立つ。一方、米政府による使用に関する責任を巡る控訴の結果次第では、モデルナには追加で最大13億ドルの支払いが生じる可能性がある。
モデルナは9月30時点で損失が発生する可能性は高くないと判断し、この追加額について負債を計上しなかった。これは会計上の判断であり、支払いがあり得ないという結論ではない。開示された最大額は、継続中の開発に必要な資金と比べても大きい。提出書類は、実際に支払う可能性が高い額を見積もっていない。
四半期末後には、好ましい進展もあった。10月28、モデルナとGSKは感染症分野の特許を相互に使えるようにすることで、米国と欧州で係争中だった紛争を和解した。このライセンスについて、どちらにも支払い義務はない。一方、9月の欧州特許庁の決定では、モデルナがファイザーとビオンテックに対して主張していた特許のうち1件が取り消され、複数の国で関連手続きが終了した。モデルナに対する請求を含め、ほかの侵害訴訟は続いている。これらの事実が示すのは、特定の紛争に関する不確実性の低下であり、現金の回収額や特許全体に問題がないという結論ではない。
出典:2026年のフォーム10-Q、注記12、28~29ページ;第II部、項目1、44ページ。10月28のGSKとの和解を含む。
8.モデルナには製品の幅を広げ、現金収入につなげる時間が増えた
モデルナの事業運営は前進したが、事業を広げる移行期には引き続き資金調達が支えとなっている。海外向けの納品と研究費の縮小により、四半期の営業利益は黒字に戻った。がん分野の結果は、開発を続ける力を保つ理由をさらに強めた。残る課題は、こうした進展を通年で現金を伴う利益につなげることだ。
11月6、経営陣は2026年の売上高の予想成長率を15%~25%に引き上げた。2025年の売上高19億4,400万ドルを基にすると、売上高は$2.24–$2.43 billionとなる計算だ。和解費用を含む費用予想の合計は約54億ドルとなる。これらの概数から計算すると、営業損失は$2.97–$3.16 billionとなる。これは経営陣の見通しを基にした計算であり、経営陣自身の利益予想ではない。
経営陣は、年末の現金と投資残高を$8.1–$8.3 billionと予想した。転換社債による調達額を含み、融資枠からの追加借り入れは含まない。この残高は、事業を支えるために使える資金の規模を示す。
出典:モデルナの2026年11月6日付決算発表、「2026年の財務見通し」、2~3ページ;2025年のフォーム10-K、連結損益計算書、103ページ。計算の詳細は後述する。
顧客が季節性製品の納品分を支払い、新たなワクチンの受注で工場の稼働が改善し、インティスメランが承認されて実行可能な販売体制に至れば、事業への評価は強まる。代金の回収が遅れ、使われない在庫がさらに増え、特許を巡る追加支払いが生じ、あるいは発売が遅れれば、見込んだ収益を得る前に資金を使うことになる。モデルナには今、計画を実行する時間が増えた。進展を最も明確に示すのは、製造と継続的な開発の費用を支払った後、製品販売からどれだけ現金が残るかだ。
報告の基準と計算上の注記
報告の基準:この分析は、モデルナと連結子会社を米国の会計基準に基づいて扱い、グループ内の取引残高を相殺している。対象としたフォーム10-Qは、2026年9月30日に終了した四半期を対象とし、2026年11月6日に提出された。中間財務諸表は監査を受けていない。受付番号は0001682852-26-000197、CIKは0001682852である。業績比較では、3カ月間と、9月30に終了した9カ月間を区別する。貸借対照表の比較には2025年12月31日を使う。モデルナが報告する事業セグメントは1つであり、製品別や地域別の売上高は、それぞれの利益を示すものではない。
調査の締め切りはニューヨーク時間の2026年11月7日。確認した最新の財務・事業開示の日付は11月6で、10月の臨床試験結果と10月28の和解も含めた。対象資料は引用した文書に限る。提供された提出書類の全文を基礎とし、関連する過去の提出書類、FDAの製品表示、会社の原資料も照合した。
出典:SEC提出書類の一覧;2026年のフォーム10-Q、注記2;2025年のフォーム10-K、注記2。連結数値の一部はSECの企業別XBRLデータとも照合し、受付番号、米ドル単位、実際の対象期間の開始日と終了日を確認した。2026年の有形固定資産の数値には、貸借対照表の注記に従い、ファイナンス・リースで使用する資産を含めた。
計算上の注記:以下のドル建て数値は、特に断らない限り百万米ドル単位で示す。括弧はマイナスを表す。提出書類の丸められた数値を使うため、比率は概算である。
- 成長率と四半期の利益。売上高の成長率は同じ長さの期間で比べる。四半期は$1,313 / $1,016 − 1 = 29.2%、9カ月間は$1,847 / $1,266 − 1 = 45.9%。四半期の営業利益は、前期の$260の損失に、売上高の増加$297と研究費の減少$218を加え、売上原価の増加$111と管理費の増加$14を差し引くと、$130となる。
製品売上高と生産準備に伴う収入の合計に対する売上原価の比率は、$318 / ($1,273 + $31) = 24.4%で、比較対象の期間は$207 / ($973 + $20) = 20.8%だった。売上高全体に対する純利益の比率は$162 / $1,313 = 12.3%。前の四半期は損失の比率が$200 / $1,016 = 19.7%だった。
- 利益と営業活動による現金の照合。この計算では、当期に現金の支出や受け取りを伴わなかった会計上の費用と収益を取り除く。そのうえで、顧客や仕入先などとの実際の支払いや回収の時期を反映する。
| 利益と現金の照合、百万米ドル | 2025年の最初の9カ月 | 2026年の最初の9カ月 |
|---|---|---|
| 純損失 | (1,996) | (1,963) |
| 現金を伴わない調整の純額 | 519 | 527 |
| 営業資産・負債の変動による現金への影響 | (1,326) | (1,279) |
| 営業活動による現金収支 | (2,803) | (2,715) |
2026年の現金を伴わない調整では、株式による報酬$351と減価償却・償却費$190を足し戻し、その他の調整の純額$14を差し引く。残りの調整では、当期の現金収入にならなかった投資収益$33を差し引き、投資損失$2とその他の現金を伴わない費用$17を足し戻す。売掛金と在庫の増加で$1,343の現金を使い、その他の営業上の残高の変動で$64の現金が入った。この差が上表の$1,279の流出となる。
- 期首と期末の現金。2026年は、期首の現金$2,597 − 営業活動による流出$2,715 − 投資活動による流出$1,462 + 財務活動による流入$2,776 = 期末の現金$1,196。これらの合計には、使途が制限された現金を期首に$2、期末に$1含む。2025年は、期首の現金$1,929 − 営業活動による流出$2,803 + 投資活動による流入$1,994 + 財務活動による流入$12 + 為替の影響$2 = 期末の現金$1,134。
2026年の投資活動による流出は、有価証券の純購入額$1,242、設備の購入額$146、ライセンスの購入額$74からなる。財務活動では、社債から$3,000、従業員向け株式制度から$172が入った。そこから発行手数料$43、オプション$329、従業員への株式交付に伴う税金$7、ファイナンス・リースの支払い$17を差し引くと、合計は$2,776となる。
- 売上高の見積もりと売掛金。返品見込みとその他の手数料に関する負債は、期首の$509 + 当期の売上に対する見積負債$300 − 過去の売上に関する見積額の減少$59 − 当期の売上に関する精算$1 − 過去の売上に関する精算$149 = $600となる。売掛金の純額は、総額$2,608 − 契約に基づく控除額$1,235 − 支払いが見込めない顧客に対する引当額$6 = $1,367となる。
契約に基づく控除額は、金額がはるかに小さい未払いへの引当額とは別のものだ。貸借対照表上の売掛金は$1,183増えた。キャッシュフロー計算書には$1,184の変動が記載されている。それぞれの数値を、各書類で使われる基準に従って用いる。
- 資産、負債、資本。9月30時点では、資産$13,468 = 負債$6,631 + 資本$6,837。12月31時点では、資産$12,338 = 負債$3,688 + 資本$8,650。
払込資本には、株式の発行や株式による報酬を通じて加わった額と、関連する控除額が記録される。残高は、期首の$1,382 + オプションの行使$162 + 従業員による株式購入$10 + 株式報酬$351 − 従業員への株式交付に伴う税金$7 − 持ち分の希薄化を防ぐオプション$329 = $1,569となる。
利益剰余金は、事業内に残した利益の累計額を示す。$1,963の純損失により、残高は$7,223から$5,260に減った。その他の包括利益には、純利益に含めない一部の価値の変動を記録する。その残高は、有価証券に関する純損失$33と外貨換算による損失$4により、$45から$8に減った。これらの変動を合わせると、資本は$1,813減る。含めるべき自社株買いや株式の消却は報告されていない。
- 株式数と一株当たり利益。基本的一株当たり利益は、四半期の利益を実際に発行済みだった株式の平均数で割る。$162 / 401百万株 = 約$0.40となる。希薄化後一株当たり利益には、株式報酬や転換社債によって増える可能性のある株式も反映する。税引き後の転換社債の利息$1を利益に足し戻し、株式報酬による潜在株式24百万株と社債による5百万株を加えると、$163 / 430百万株 = 約$0.38となる。
この社債を当初の条件ですべて転換した場合の株式数は、約14百万株だ。四半期の計算に含めたのは5百万株だけである。社債の発行後、四半期の一部の期間しか経過していないためだ。損失を計上した期間には、潜在株式を含めることで一株当たり損失が小さく見える場合、その株式を除外する。2025年の四半期の株式数390百万株と、2026年の9カ月間の株式数398百万株には、この規則を適用した。
- 経営陣の通年見通し。売上高:$1,944 × 1.15 = $2,235.6、$1,944 × 1.25 = $2,430。費用:売上原価$1,700 + 研究費$2,700 + 管理費$1,000 = $5,400。差し引くと、利息と税金を反映する前の営業損失は$2,970~$3,164.4となる。これらは概数による予想で、和解費用を含む。
出典:2026年のフォーム10-Q、6~11ページの財務諸表、注記2~3、9、11~15、および39~42ページの経営陣による説明;11月6の財務見通し、2~3ページ;2025年のフォーム10-K、103ページ。
本レポートは情報提供と事業分析のみを目的とする。投資助言ではない。