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2026年10月8日木曜日
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セールスフォース、投資利益で純利益急増も営業利益率は低下

執筆 MinJeKim

セールスフォース、投資利益で純利益が急増する一方、営業利益率は低下

セールスフォースは、企業の営業、顧客サービス、マーケティング、顧客データの管理を支えるソフトウェアを販売している。2026年7月31日に終了した2027年度第2四半期は、投資利益に押し上げられ、純利益が86.9%増えた。一方、売上高が10.8%増えたにもかかわらず、営業利益はほぼ横ばいだった。AIの計算処理などサービス提供にかかる費用や、買収に伴う償却費の増加が、営業利益率を押し下げた。事業は引き続き多額の現金を生み出している。ただし、買収を通じてAI製品を拡充する費用に加え、自社株買いのための借り入れで利払いも増えている。

出典:セールスフォースのForm 10-Q、2026年8月27日提出、連結財務諸表、3–8ページ、注記3および8、経営陣による説明、37–41ページ。

集計基準:本分析は、米国会計基準に基づくセールスフォースと連結子会社を対象とする。当四半期は2026年5月–7月、上半期は2026年2月–7月を対象とする。特に記載がない限り、2025年の対応する期間と比較している。情報の基準日は2026年10月8日。その後に完了した買収は別途明記している。以下の予想は、経営陣が8月26日に示したもので、実績ではない。

1. 売上増加の大きな部分を買収が占める

当四半期の売上増加額の約五分の2をインフォマティカが占めた。同社の売上高は、買収日からセールスフォースの連結業績に含まれている。経営陣は、サブスクリプションの成長を支える主な要因として、新規顧客、上位プランへの移行、追加契約も挙げている。価格は大きな成長要因ではなかった。

売上高は11億900万ドル増え、113億4,500万ドルとなった。2025年11月に買収したインフォマティカは、当四半期に4億5,600万ドルの売上高をもたらしたが、前年同期には寄与していない。この寄与分を除くと、売上成長率は約6.4%となる。これはインフォマティカを除いた計算であり、買収や為替の影響をすべて除いた成長率ではない。他の買収や為替の影響は残っている。

連結売上高、百万米ドル2026年度第2四半期2027年度第2四半期増減率
サブスクリプション・サポート9,69010,82011.7%
専門サービス・その他546525−3.8%
売上高合計10,23611,34510.8%
Agentforce Appsのサブスクリプション・サポート6,6827,1937.6%
Data 360・Headless Platform・その他のサブスクリプション・サポート3,0083,61820.3%

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、損益計算書、4ページ、注記2、16–18ページ、売上高の説明、36–37ページ。

集計基準:末尾の2行はサブスクリプション・サポートの内訳であり、別途加算する売上高ではない。2027年度に別途開示されたヘッジ利益900万ドルは含まれていない。セールスフォースは、新しい表示方法に合わせて前年の製品区分を組み替えた。同社が報告する事業セグメントは1つで、これらの区分ごとの営業利益は開示していない。

Agentforce Appsには、従来からの営業、サービス、マーケティング、コマースの各アプリケーションに加え、Slackと関連するAI製品が含まれる。この区分の成長は、顧客対応を支える既存事業が今も拡大していることを示す。より速く成長しているデータ・プラットフォーム区分には、Data 360、MuleSoft、Tableauなどに加え、インフォマティカが含まれる。そのため、この区分が20.3%成長したからといって、セールスフォースが自社開発したデータ製品も同じ率で成長したとはいえない。

上半期の比較でも、買収の効果が確認できる。売上高合計は12.0%増の224億7,800万ドルとなり、このうち9億ドルはインフォマティカによるものだった。この寄与分だけを除くと、成長率は7.5%となる。為替は上半期の報告上の成長率を約1パーセントポイント押し上げた。一方、提出書類によると、第2四半期の為替の影響はごく小さかった。こうした違いがあるため、四半期と上半期の成長率を、同じ基礎的な成長傾向として扱うべきではない。

成長は幅広い地域に及んだ。四半期売上高は、米州で9.9%、欧州で13.8%、アジア太平洋で9.1%増えた。連結売上高の増加額11億900万ドルのうち、米州が6億6,800万ドルを占め、金額では最大の寄与となった。地域区分は契約を結ぶセールスフォース側の法人に基づいており、顧客の所在地とは異なる場合がある。このため、これらの数値は各顧客市場の支出を直接示すものではない。

セールスフォースの請求方法は、今後の事業を考えるうえで役立つ手がかりとなる。クラウドのサブスクリプションの大半は、顧客に年間分を請求済みでも、サービスの提供に応じて徐々に売上高に計上される。7月31日時点で、契約済みでまだ売上高に計上していない金額は663億ドルだった。このうち335億ドルは12か月以内に計上する見込みで、前年同時点より14%増えていた。これは売上拡大の継続を裏づける。ただし、この指標は買収、更新時期、契約期間にも左右される。

顧客の維持状況も、もう一つの確認材料となる。開示された年間換算契約額ベースの離脱率は約8%で、前年と同水準だった。この指標には、Slackのセルフサービス契約、インフォマティカ、当年度に買収した企業は含まれていない。対象事業の安定は好材料である。セールスフォースはAIを導入するなかで、顧客維持が広く悪化しているとは報告していない。ただし、この安定した基盤をより速い成長につなげるには、既存顧客の追加購入と新規顧客の獲得が必要だ。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、注記1–2および経営陣による説明、31–33ページ、36–37ページ。インフォマティカの寄与額4億5,600万ドルおよび9億ドルは、売上高の説明に開示されている。

2. 売上高は増えたが、四半期の営業利益は増えなかった

当四半期に増えた売上総利益は、営業費用の増加ですべて消えた。セールスフォースは、サービス提供の直接費用を差し引いた後に残る利益を増やした。しかし、研究、販売、管理、事業再編にかかる費用も、ほぼ同じ額だけ増えた。

米国会計基準の連結業績、百万米ドル(利益率・EPSを除く)2026年度第2四半期2027年度第2四半期2026年度上半期2027年度上半期
売上高10,23611,34520,06522,478
売上総利益7,9948,69615,55817,259
営業利益2,3322,3314,2744,678
営業利益率22.78%20.55%21.30%20.81%
戦略投資損益(純額)62,613−573,171
支払利息67473135790
純利益1,8873,5263,4285,633
希薄化後一株利益(EPS)、米ドル1.964.293.556.67

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、連結損益計算書、4ページ。利益率は、提出書類に百万ドル単位で記載された金額から算出し、その後に百分率を丸めている。

四半期の売上総利益は7億200万ドル増えた一方、営業費用は7億300万ドル増えた。費用増加のうち、研究開発費が2億600万ドル、販売・マーケティング費が4億1,600万ドル、事業再編費用が9,000万ドルを占めた。管理費は900万ドル減少した。この費用増加によって、営業利益は横ばいにとどまった。

サブスクリプションを提供するための直接費用も、その売上高を上回る速さで増えている。サブスクリプションの売上総利益率は83.0%から81.3%に低下した。経営陣は、サービス提供費用の増加要因として、ホスティング、生成AI技術、買収した資産の償却を挙げている。償却とは、買収で取得した技術の費用を、利用できると見込む年数にわたって配分することだ。買収代金の支払いが過去に済んでいても、現在の利益を減らす。

セールスフォースによると、導入支援や助言の業務は、顧客の製品導入を助け、より大きなサブスクリプション契約につながる。しかし、専門サービスの売上高は5億2,500万ドルに減少し、直接費用は6億2,800万ドルに増加した。この結果、売上総損失は前年同期の5,100万ドルから1億300万ドルに拡大した。経営陣は、売上減少の主因を、複数年にわたる大規模な業務変革プロジェクトへの需要の弱まりとしており、当面はこの弱さが続く可能性があると説明している。この業務はサブスクリプションの販売を支えている。ただし、増え続ける直接損失を補っているか判断できるほど、そこから生じたサブスクリプション利益の金額は提出書類に示されていない。

経営陣は、AIによる効率化で節約した費用を、製品開発とインフォマティカの統合に再投資する方針だ。顧客が自ら購入手続きを進める仕組み、パートナーの活用、営業生産性の向上によって、売上高に対する販売費用の割合が時間とともに下がると見込んでいる。ただし、当四半期の実績は、利益率改善がまだ計画段階であることを示す。開発と販売への支出が増える一方、全体の営業利益率は2.24パーセントポイント低下した。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、損益計算書、費用の説明、33–34ページ、売上高と費用の説明、36–39ページ。

より長い期間で比較すれば、1四半期だけの結果を重く受け止めすぎずに済む。2024年7月31日に終了した四半期は、売上高が93億2,500万ドル、営業利益が17億8,300万ドルで、営業利益率は19.1%だった。今回の営業利益率20.5%はその水準を上回るものの、2025年の同四半期に達成した22.8%を下回る。セールスフォースは、過去に改善した収益性の一部を維持しているが、足元の事業拡大でその改善分の一部を使っている。上半期の営業利益はなお9.5%増えており、横ばいだった第2四半期だけから受ける印象よりも強い。

出典:セールスフォースの2025年度第2四半期のForm 10-Q、連結損益計算書、SEC企業財務データ、5月1日–2024年7月31日の売上高と営業利益のデータ、今回の提出書類、4ページ。

純利益の急増は、別の要因によるものだった。四半期の投資利益は600万ドルから26億1,300万ドルに増加した。この中には、他の投資先の損益を加減する前の段階で、アンソロピックに関する未実現利益約27億ドルが含まれる。未実現利益は、売却代金を受け取ることなく、帳簿上の投資価値を引き上げる。米国会計基準では利益に含まれるが、顧客がセールスフォースのソフトウェアに支払った代金ではない。

税引前利益の増減をすべて比較すると、その影響が明確になる。税引前利益は21億4,600万ドル増えた。内訳は、投資利益が26億700万ドル増えた一方、支払利息が4億600万ドル増え、その他の利益が5,400万ドル、営業利益が100万ドル減った。両期間から戦略投資利益の純額だけを除くと、税引前利益は前年同期の24億ドルに対し19億3,900万ドルとなり、19.2%減少する。この比較計算には、報告されたその他の費用と利益をすべて残している。継続的に得られる利益や税引後利益を示す指標ではない。

四半期の税金費用は5億1,900万ドルから10億2,600万ドルに増加した。この追加の税金費用5億700万ドルを差し引いた後、純利益は16億3,900万ドル、率にして86.9%増加した。

株式数の減少も、一株利益(EPS)の伸びをさらに大きくした。希薄化後の加重平均株式数は962百万株から821百万株に減った。現在の純利益を変えずに前年同期の株式数を使うと、一株利益は報告値の$4.29ではなく、約$3.67となる。これは、株式数のあらゆる変化による分母の効果を示すもので、3月の自社株買いだけの効果ではない。上半期については、セールスフォースは別途、加速型自社株買いがEPSを$0.57押し上げたと説明している。また、23.5%の税率を仮定すると、戦略投資のEPSへの寄与は$2.87だったとしている。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、注記3および11、経営陣による説明、31–32ページ、39ページ。上半期の投資によるEPSの計算は、経営陣が指定した税務上の取り扱いに基づくもので、連結実効税率を用いていない。

3. AIの導入は進むが、売上区分の名称だけではAIの収益性はわからない

セールスフォースのAI戦略は、同社のアプリケーションを通じてすでにつながっている顧客データと業務プロセスを土台としている。これらのアプリケーションには、顧客の記録、業務上のルール、実行が認められた操作が含まれている。私たちは、これがセールスフォースにとって、顧客がすでに使っているツール内で作業を行うエージェントを販売する道筋になると評価している。ただし、エージェントが正確に動作し、顧客ごとのアクセス権限を守ることが前提となる。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、事業概要、31ページ。

経営陣は、AgentforceとData 360の年間経常収益(ARR)が39億ドル近くに達し、うちAgentforceが15億ドルを超えたと報告しました。ARRは、継続的な事業収益を年額に換算した指標です。今四半期からAgentforceの集計範囲が広がり、AI製品・サービス、Slackbot、Headless 360が含まれました。セールスフォースはまた、AgentforceとSlackでのエージェントの活動量を示す独自指標「Agentic Work Units」が、四半期中に3.2十億単位となり、前四半期比で97%増加したと報告しました。これらの会社独自の指標は導入や活動の状況を示すもので、四半期に計上された売上高や製品の利益ではありません。

出典:セールスフォースの2027年度第2四半期決算発表、2026年8月26日、「セールスフォースの主な動向」。

ここでも、買収と定義変更の影響が重要です。前四半期末のAIとデータを合わせたARRは34億ドル近くで、Informatica Cloudの11億ドルとAgentforceの12億ドルが含まれていました。その後、Agentforceの定義が広がったため、2四半期の数値の差を取っても、同じ製品群の成長だけを取り出すことはできません。第1四半期のAgentforceとData 360の受注額の半分超は既存顧客からのものでした。この点は、既存顧客との取引を広げる戦略を裏付けています。

出典:セールスフォースの2027年度第1四半期決算発表、2026年5月27日、「セールスフォースの主な動向」。

インフォマティカは、導入を妨げる根本的な問題に対応します。企業では、多くのシステムに整合性のない記録が保管されていることがよくあります。同社のデータカタログ、統合、品質管理、利用管理の機能は、セールスフォースのエージェントが信頼できる情報を見つけ、アクセス規則を守るのを助けるためのものです。セールスフォースは買収完了時に、この目的を説明しました。事業上の効果は、インフォマティカの売上をより大きな報告区分に組み入れるだけでなく、顧客がより役立つエージェントを導入し、データサービスの購入を増やすことで生まれると考えられます。

出典:セールスフォース、インフォマティカの買収を完了、2025年11月18日。

競争があるため、セールスフォースがこの需要を取り込める範囲には限りがあります。マイクロソフトは、2026年6月30日終了の四半期にDynamics 365の売上高が13%増加し、為替変動を除くと12%増加したと報告しました。製品構成が異なり、四半期末も1か月早いため、この比較から市場シェアは算出できません。ただし、セールスフォースが事業拡大を進める中で、顧客が競合する業務アプリケーションも購入していることは分かります。

セールスフォース自身のリスク開示は、別の課題も挙げています。AIを基盤に設計されたサービスの提供企業は、新しい操作画面や接続方法を通じて業務を自動化できます。その結果、従来型ソフトウェアの画面や利用者数に対する需要が減る可能性があります。同社はこれに対応するため、従来のアプリケーションの外からの接続も含め、自社基盤を通じてエージェントがデータや業務操作を利用できるようにしています。事業として問われるのは、これらの機能への支払いが、従来の利用者数に基づく購入の減少分を補えるかどうかです。

出典:マイクロソフトの2026年度第4四半期決算、事業の主な動向および為替変動を除く数値への調整表;セールスフォースのForm 10-Q、事業概要、31ページ、競争と価格設定のリスク、47–56ページ。

目先の採算上の制約は、サブスクリプションの利益率に表れています。AIの活動量が増えるほど、その処理に計算資源が必要になり、セールスフォースによると、その費用はすでに増えています。有料での利用が十分に増え、サービス提供の費用と、その基盤となる開発の費用を賄えるようになれば、利用の拡大がより確かな事業成果につながります。同社の連結開示からは、導入の拡大と足元の費用負担の増加が確認できますが、Agentforce単独の利益率はまだ示されていません。したがって、需要は前向きに評価できる一方、その需要に応える際の採算が条件となります。

4. 顧客からの代金回収が現金を生み、入出金の時期も大きく寄与

上半期の営業キャッシュフローは、代金回収と税金の現金支払いの減少に支えられ、営業利益を上回るペースで増えました。 この結果は実際に資金を確保する力を示しています。ただし、投資利益や1四半期だけの支払い時期の影響を、顧客から継続的に現金を生む力と取り違えるべきではありません。

設備投資後に残る現金が増加

設備投資後に残る現金が増加 (百万米ドル; 連結キャッシュフロー、百万米ドル). 2026年度上半期: 7,216 − 314 = 6,902; 2027年度上半期: 7,970 − 316 = 7,654. 営業キャッシュフローから設備投資(支出を正数表示)を差し引いた金額。その他すべての現金支出を控除した額ではありません。
営業キャッシュフローから設備投資(支出を正数表示)を差し引いた金額。その他すべての現金支出を控除した額ではありません。 2027年度第2四半期のForm 10-Q
連結キャッシュフロー、百万米ドル2026年度上半期2027年度上半期
営業キャッシュフロー7,2167,970
設備投資(支出を正数表示)314316
フリーキャッシュフロー(算出値)6,9027,654
買収支出(取得現金控除後)541,504
自社株買いの現金支出4,85827,332
配当・配当相当額の現金支出801729
債務発行による現金純収入024,842

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、連結キャッシュフロー計算書および補足開示、7–8ページ。

集計基準:ここでのフリーキャッシュフローは、営業キャッシュフローから計算書の設備投資額を差し引いたものです。買収、戦略投資の購入、資金調達に伴う債務の元本返済は含みません。設備投資を維持目的と拡大目的に分けてはいません。

セールスフォースは通常、サブスクリプション料金を年ごとに前払いで請求します。請求額が最も大きいのは通常第4四半期で、続く第1四半期に代金回収額が最も大きくなります。このため、1月31日時点で積み上がった売掛金の回収が、上半期の現金収入の多くを占めます。また、顧客にサービスを提供するにつれて、すでに請求した金額は、まだ売上に計上していない未稼得収益から売上高へ移ります。

利益からキャッシュフローへの調整には、この両面が反映されます。上半期の利益を営業キャッシュフローに換算する際、売掛金の純減少によって80億3,500万ドルが加算されました。これは会計上の調整額であり、顧客から回収した代金の総額ではありません。一方、以前に請求したサービスの売上を計上すると未稼得収益が減るため、55億7,600万ドルの減算となりました。この2勘定を合わせた加算額は24億5,900万ドルで、前年同期は21億6,100万ドルでした。差し引きの改善額は2億9,800万ドルで、売掛金の調整だけを見た場合の増加額16億8,600万ドルよりもかなり小さくなります。

利益を営業キャッシュフローに換算するため、セールスフォースはまず、当期の営業活動による現金の支払いや受け取りを伴わない費用や利益を取り消す調整をします。純利益56億3,300万ドルを出発点に、減価償却費・償却費19億5,100万ドル、繰延販売手数料の償却費11億7,300万ドル、株式報酬費用17億6,300万ドルを加算しました。投資利益31億7,100万ドルは差し引きました。その投資の売却で得た現金は、投資キャッシュフローに表示されます。上記の売掛金と未稼得収益の調整を含む営業資産・負債の変動は、差し引き6億2,100万ドルの加算となり、営業キャッシュフロー79億7,000万ドルにつながりました。

販売手数料の調整には説明が必要です。セールスフォースは、一部の販売手数料を全額費用に計上する前に支払います。上半期のキャッシュフロー計算書では、将来の期間に費用計上するために資産として記録した額10億5,700万ドルを差し引き、過去からの累積残高のうち当期に費用計上した11億7,300万ドルを加算しました。これらの調整により、営業キャッシュフローは純利益より1億1,600万ドル多くなりましたが、新たに現金を受け取ったわけではありません。費用計上を繰り延べた契約獲得費用の残高は49億4,400万ドルに減少しました。新規契約の獲得費用は、見込まれる更新も含めて通常4年間で費用に計上し、更新の費用は通常2年間で計上します。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、キャッシュフロー計算書、7ページ;注記1「収益契約を獲得するために資産計上した費用」;請求の季節性に関する説明、33ページ。

損益計算書上の法人税等の費用は増えましたが、上半期に現金で支払った税金は9億9,000万ドルから4億6,100万ドルに減少しました。この5億2,900万ドルの減少は現金の創出を支えました。ただし、開示資料では、恒久的な節税による分と支払い時期の違いによる分を個別には示していません。この効果はすでに営業キャッシュフローに含まれているため、追加の現金増加として再び加算してはいけません。

第2四半期の結果は、入出金の時期が短期間の数値に大きく影響することを示しています。営業キャッシュフローは7億4,000万ドルから12億6,900万ドルへ増加しました。セールスフォースが代金を支払う前でも、費用は利益を減らすことがあります。そのため、未払いの債務の変動は、利益を現金に換算する際に影響します。買掛金、未払費用、その他の負債の調整額は前年同期比で11億800万ドル改善した一方、売掛金と未稼得収益を合わせた調整額は4億8,700万ドル悪化しました。税金の現金支払いも減少しました。こうした入出金の時期に左右される変動は、四半期のキャッシュフロー増加率71.5%が、上半期の増加率10.4%を大きく上回った理由の一部を説明しています。

利息には、逆方向の時期のずれがあります。上半期の支払利息は費用として7億9,000万ドル計上されましたが、実際の支払額は2億4,000万ドルにとどまりました。新たに発行した社債は半年ごとに後払いで利息を支払うため、上半期の現金支払額だけでは、継続的な費用負担が実際より小さく見えます。この支払い日程により、現金支出の一部が後の期間に回ります。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、7–8ページおよび注記8。税金の現金支払いと運転資金に関する説明は、報告されたキャッシュフローの中で重なっているため、別々の要因として足し合わせることはできません。

投資活動では33億8,000万ドルを支出しました。内訳は、買収に15億400万ドル、売却収入を差し引いた戦略投資に6億8,900万ドル、売却・満期償還を差し引いた市場性有価証券に8億7,100万ドル、設備投資に3億1,600万ドルです。市場性有価証券の購入は、資金を手元流動性の残高に含まれる投資へ移すものです。一方、買収や戦略投資への支出は、より長期の事業目的に現金を充てるものです。

最後に、現金残高は次のようにつながります。期首の現金73億2,700万ドルに営業活動からの79億7,000万ドルを加え、投資活動の支出33億8,000万ドル、財務活動の支出35億4,300万ドル、為替の影響6,400万ドルを差し引くと、83億1,000万ドルとなります。計算書には現金および現金同等物が示されており、使途が制限された現金についての別個の調整表はありません。市場性有価証券は、この現金合計には含まれません。セールスフォースの現金残高は増えましたが、同時に実施した自社株買いの資金を賄うには、新たな借り入れが不可欠でした。

5. 自社株買いが営業活動以上に資金調達構造を変えた

セールスフォースは、短期的に使える資金を維持しながら、多額の自己資本を長期債務に置き換えました。 自社株買いは、売却する株主に現金を返し、ほかの条件が同じなら、保有を続ける株主の持分比率を高めます。従業員への株式付与による持分の希薄化を相殺することもできます。借り入れにより、同社は営業活動でその現金を生み出す前に、大規模な自社株買いを完了できました。純利益が同じなら、株式数の減少は一株当たり利益(EPS)を押し上げます。一方、追加の利息は、株主に回せる利益と現金を減らします。

3月に、セールスフォースは加速型自社株買い契約に基づいて250億ドルを前払いし、当初に約103百万株を受け取りました。また、第1四半期には市場で11百万株を購入しました。第2四半期に市場での自社株買いはありませんでした。したがって、第2四半期のキャッシュフローに計上された自社株買い支出8,400万ドルを、新たな市場買い付け計画と表現すべきではありません。

上半期のフリーキャッシュフロー76億5,400万ドルは配当7億2,900万ドルを賄い、自社株買い前の残額は69億2,500万ドルでした。自社株買いの現金支出273億3,200万ドルは、買収やその他の投資を考慮する前でも、その残額を204億700万ドル上回りました。債務による純調達額248億4,200万ドルが、大幅に拡大した株主還元の大半を賄いました。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、キャッシュフロー計算書;注記8–9;自社株買いの説明、41–42ページ。

3月の発行により、満期が2028年から2066年までの社債250億ドルが加わりました。各発行区分の元本と表面利率を使うと、契約上の年間利息は約13億4,000万ドルです。発行済みの固定金利社債全体では、変動金利の期間借入、手数料、ファイナンス・リースを除いても、年間約15億7,000万ドルが必要です。これらは表面利率から算出した通年の利息額であり、上半期に実際に支払った利息ではありません。

セールスフォースはまた、インフォマティカの買収のために借りた60億ドルを、2031年3月に満期を迎える5年の期間借入に借り換えました。これにより、2026年11月に予定されていた40億ドルの返済がなくなり、残る20億ドルについても、従来の2028年11月から返済期限が延びました。この借り換えは現金の移動を伴わず、キャッシュフロー計算書から除外されています。これを追加で60億ドルの現金を調達したと扱うと、使える資金を過大に見積もることになります。

資金調達債務の元本、十億米ドル返済予定額
2027年度の残り0.00
2028年度0.00
2029年度6.00
2030年度4.25
2031年度0.00
それ以降29.25
合計39.50

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、注記8、24–25ページ;金利リスク、43–45ページ。

集計基準:会計年度は1月31日に終了します。2031年3月の期間借入の満期は2032年度に当たるため、「それ以降」に含まれます。債務の元本は、発行時の割引額と発行費用があるため、帳簿価額392億8,800万ドルとは異なります。

最初に大きな返済が集中するのは暦年2028年の60億ドルで、続いて2029年3月に42億5,000万ドルの返済が予定されています。セールスフォースは7月31日時点で、現金と市場性有価証券を114億300万ドル保有していました。また、2029年10月に期限を迎える未使用の融資枠50億ドルもありました。同社は、すべての債務契約上の遵守事項を守っていると報告しました。期間借入には一般的な遵守事項と債務不履行の規定があり、支払いの遅延、遵守事項への違反、ほかの重要な債務の不履行などが含まれます。そのため、1つの借り入れ契約で起きた問題が、別の契約にも影響することがあります。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、注記8;2026年3月12日付のForm 8-K、項目1.01、5年融資契約。

60億ドルの期間借入金には変動金利が適用される。元本全額が未返済のままなら、金利が1パーセントポイント上がると、年間の支払利息は約6,000万ドル増える。これは税金や相殺する効果を考慮する前の金額である。残高がはるかに大きい固定金利の社債には、金利変動がすぐに利払いへ響くことはない。ただし、利息の支払いは長期にわたり現金を必要とする。

借り換えで目前の返済期限への対応は楽になった一方、自社株買いで継続的な利払い負担は増えた。事業投資後に残る現金を使って、より緩やかに自社株を買い戻していれば、借り入れは少なくて済んだが、株式数の減少も緩やかになっていた。セールスフォースには引き続き事業に資金を回す余地がある。ただ、現金を早く株主に還元する選択をしたため、今後生み出す現金で、買収後の統合や製品への投資に加え、増えた資金調達費用も賄う必要がある。

6. 買収でのれんが増え、自社株買いで純資産が減少

貸借対照表は、買収した事業や投資への依存が強まる一方、それらを支える純資産が少なくなっている。 そのため、買収後の統合が成功するかどうかが、より重要になっている。

連結貸借対照表(百万米ドル)2026年1月31日2026年7月31日
現金・市場性有価証券9,56511,403
売掛金14,3396,320
有形固定資産(純額)3,1203,042
戦略投資7,59111,324
のれん57,94159,250
買収した無形資産(純額)6,8156,142
総資産112,305109,620
資金調達債務(帳簿価額)14,43939,288
前受収益24,31718,787
負債合計53,16371,242
純資産合計59,14238,378

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、連結貸借対照表、3ページ、注記3~9。

売掛金の減少は、主に前述した代金回収の季節的な周期を反映している。買掛金、未払費用、その他の流動負債は12億3,500万ドル減少し、このうち未払報酬は約11億ドル減った。これらは事業運営に伴う支払義務であり、買収や自社株買いの資金を賄う借り入れとは異なる。前受収益も借入債務とは異なる。主に、セールスフォースが事前に請求した金額に対して、今後サービスを提供する義務を表す。

流動負債は流動資産を42億5,300万ドル上回った。ただし、その負債のうち187億8,700万ドルは前受収益であり、流動負債に分類された資金調達債務はなかった。すべての負債を直ちに現金で返済する必要があると考えて、この不足額を読むと、定額課金の事業モデルを見誤る。約束したサービスを提供するにも費用はかかるため、定額課金事業の利益率と顧客の契約更新が、引き続き資金繰りの要となる。

セールスフォースが証券を購入し、投資利益を計上したため、四半期末の投資資産残高は大きく増えた。そのほぼすべてが非上場の投資先への投資だった。アンソロピックが占める割合は約45%で、1月31日時点の22%から上昇した。確認できる資金調達取引によって帳簿価額が上がっても、その投資をすぐに支払いに使えるようになるわけではない。このため、戦略投資113億2,400万ドルは、現金と市場性有価証券を合わせた手元資金114億300万ドルには含まれていない。

のれんは13億900万ドル増えた。このうち9億5,400万ドルは、4月に約12億ドルで買収したクオリファイドによるものだ。のれんは、買収価格から、個別に特定した取得資産と引き受けた負債の差額を差し引いた残りである。人材や事業機会の拡大などに期待する価値を反映する。クオリファイドの買収では、技術や顧客関係として個別に特定できる資産も約2億9,000万ドル加わった。買収した無形資産全体では、追加と除却を差し引いた結果、償却前の資産額が4億1,000万ドル増えた。償却費と除却の影響により償却累計額は10億8,300万ドル増え、買収した無形資産の純額は6億7,300万ドル減少した。

より大きな背景を示すのが、インフォマティカ買収時の会計処理である。買収対価は合計96億3,600万ドルで、このうち現金による対価は、取得した現金を差し引く前で95億3,800万ドルだった。買収対価の暫定的な配分には、のれん52億5,700万ドルと無形資産38億1,800万ドルが含まれていた。したがって、同社による売上高への貢献は、現金による買収支出、統合作業、継続する償却費と合わせて評価する必要がある。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、注記1および3~7、2026年度のForm 10-K、2026年3月2日提出、注記7、インフォマティカ買収、77~79ページ。

この事業モデルでは、有形資産の占める割合は小さい。設備投資に3億1,600万ドルを支出したものの、有形固定資産の純額は7,800万ドル減少した。セールスフォースはインフラ提供会社からも処理能力を購入するため、保有設備の残高だけでは、サービス提供の拡大にかかる費用全体を捉えられない。在庫は、重要な資産として独立した項目では表示されていない。繰延税金資産とその他の固定資産は5億600万ドル減少した。この項目には複数の内容が含まれるため、この減少を現金で支払う税金の節約とみなすべきではない。

資産から負債を差し引いた残りである純資産は、黒字だったにもかかわらず207億6,400万ドル減少した。事業内に蓄積した利益を表す利益剰余金は48億8,600万ドル増えた。これは利益56億3,300万ドルから、支払いを決定した配当と配当相当額7億4,700万ドルを差し引いたものだ。一方、セールスフォースが買い戻して保有する株式である自己株式の帳簿上の取得原価は227億9,400万ドル増え、純資産を減らした。

純資産の別の項目である追加払込資本は28億600万ドル減少した。セールスフォースは、加速型自社株買いのうち45億6,600万ドルについて、まだ決済が済んでいなかったため、この項目に計上した。株式報酬と株式発行に伴う計上額が、その減少の一部を相殺した。純利益に含まれない一定の変動を記録するその他の包括利益累計額は、税引き後の為替換算、証券、ヘッジの変動により5,000万ドル減少した。

7月31日時点で、同社の発行済株式は約1.081十億株、自己株式は258百万株で、自己株式を除く発行済株式数は約823百万株だった。買い戻した株式は自己株式として保有していた。従業員に現金ではなく株式などで報酬を支払う株式報酬は、上半期に17億6,300万ドルと、引き続き大きな人件費だった。また、付与済みで未決済の報酬について、提出書類の前提に基づく将来の報酬費用は83億2,400万ドルと見込まれていた。自社株買いで株式数は減ったが、株式報酬や、それが将来の現金配分に及ぼす影響がなくなったわけではない。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、貸借対照表、純資産変動計算書、包括利益計算書、3~6ページ、注記9、25~27ページ。

7. 次の段階では買収資金と着実な実行が必要

セールスフォースの当面の課題は、すでに約束した支払いなどを果たしながら、拡充したAI製品群を、利益につながる顧客の利用に結び付けることである。 買収の目的は明確だが、十分な効果を示せるようになる前に、現金が必要になる。

7月31日時点で、セールスフォースはコンテントフルに対して、すでに保有する株式分を除き約15億ドル、フィンに対して36億ドルを支払うことで合意していた。いずれも調整の対象となる。コンテントフルは複数の経路でコンテンツを管理・配信するツールを加え、フィンは顧客対応エージェントを加える。公表された対価の合計51億ドルは、7月の現金と市場性有価証券の約45%に相当した。これは公表された対価と過去時点の手元資金を比較したものであり、買収完了後の現金残高の予測ではない。

その後、コンテントフルの買収は9月1日、フィンの買収は9月10日に完了した。セールスフォースは、コンテントフルを、顧客データとエージェントが組み立てて配信するコンテンツを結び付ける手段と説明している。フィンは、実績のある顧客対応製品と顧客基盤を加える。買収完了により、両案件は取引の完了を待つ段階を終えた。ただし、最終的な買収会計処理と買収後の現金残高は、7月の財務諸表には含まれていない。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、注記6および「その他の将来の義務」、42ページ、コンテントフル買収発表および9月1日の買収完了に関する更新、フィンの9月10日の買収完了発表。

その他の支払約束も、自由に使える現金を少なくする。7月のオペレーティング・リース負債は24億5,500万ドル、ファイナンス・リース負債は6億3,300万ドルだった。開始済みのリースで今後支払う金額は、現在価値への割引前で合計34億5,500万ドルだった。未開始のリースも含めた支払約束の総額は約42億ドルだった。この広い範囲の総額には支払予定表の金額も含まれるため、両者を足してはならない。

年次提出書類では、1月31日時点で、インフラ提供会社への支払いなど、その他の契約上の支払約束が167億ドルあることも開示された。このうち37億ドルは、当時の時点から12か月以内に支払う予定だった。四半期の説明では、固定的な契約上の支払約束の見積もりに大きな変更はないとし、リース情報を更新した。1月の支払予定表は、その時点の参考情報であり、7月に新たに測定した負債ではない。また、7月31日時点で、セールスフォースは今後の事業再編に伴う現金支出を1億7,000万ドル~1億9,000万ドルと見込んでいた。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、注記5および契約上の義務に関する説明、42ページ、2026年度のForm 10-K、契約上の義務、48~49ページ。

経営陣が8月に示した見通しでは、2027年度の売上高は461億ドル~464億ドル、売上高のうち米国会計基準(GAAP)による営業利益として残る割合である営業利益率は20.1%だった。売上高見通しの2億ドルの引き上げは、既存事業の成長による1億ドル、未完了の買収による2億ドル、為替による1億ドルの減少で構成されていた。営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローの伸び率見通しは4%~5%に据え置かれた。これらの予測は、買収が完了することを条件に、その影響を織り込んでいた。

出典:セールスフォースの2027年度第2四半期決算発表、2026年8月26日、「業績見通し」。

引き上げ額だけでなく、その内訳を見ると状況がよりよく分かる。経営陣は既存事業の改善をある程度見込んでいたが、上方修正への寄与は買収の方が大きかった。一方、キャッシュフローの伸び率見通しは、四半期の純利益の伸び率を大きく下回っていた。資金調達の負担と、投資利益と現金収入の違いを考えると、この差は理解できる。

法務と税務の問題も、さらに資金などを必要とする要因として残る。スラックを巡る連邦裁判所の証券訴訟は2025年11月にセールスフォース側の勝訴で終わったが、関連する州裁判所での手続きは続いた。バックページ関連の原告は、セールスフォースのサービスが人身取引を助長したと主張している。複数の訴訟が係争中または手続き停止中で、一部では訴えの棄却を求める申し立てが認められなかった。提出書類が開示したのは金額未特定の損害賠償請求であり、予想損失を金額でまとめたものではない。

経営陣は、現在の法的案件を全体として見た場合、財務諸表に重大な悪影響を及ぼすとは予想していなかった。ただし、結果によっては特定の四半期の業績やキャッシュフローに重大な影響が及ぶ可能性を認めた。計上済みの金額を超える損失の可能性については、合理的に見積もれなかった。複数の国で税務調査も続いていた。提出書類には追加損失の合理的な見積もりが示されていないものの、未解決の請求によって将来現金の支払いが必要になる可能性はある。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、注記10および12、27~30ページ。ここでの法的案件の状況は、同提出書類の開示に基づく。

セキュリティーとデータの管理体制も、事業に直接影響する。情報を取り出したり処理を実行したりするエージェントには、確実な権限管理と正確な記録が必要だ。不備があれば、導入の遅れ、サポートや法令順守にかかる費用の増加、顧客の継続利用の低下につながり得る。セールスフォースは、脅威が変化していることを強調する一方、自社システムに関わるセキュリティー事故で、これまでに財務上の重大な影響をもたらしたものは確認されていないと開示した。そのため、AIの利用範囲を広げるサービスを販売できるかどうかは、既存の定額課金の顧客基盤を支える信頼を維持できるかにも左右される。

出典:2027年度第2四半期のForm 10-Q、サイバーセキュリティー、AI、プライバシーに関するリスク要因、47~59ページ。

8. 事業の結論:需要は伸びているが、利益と現金につなげる取り組みは途上

セールスフォースは、成長し、現金を生み出すソフトウエア事業を持つ。ただし、今四半期の利益急増は、その事業自体の改善以上に大きく見えている。 開示された顧客維持率の安定、契約済み売上高の拡大、アプリケーション売上高の増加が、事業の基盤を支えている。純利益が営業利益よりもはるかに速く増えた理由は、投資利益にある。さらに株式数の減少が、一株当たり利益(EPS)の増加を大きくした。株式数を減らすこと自体は、純利益の総額を増やさない。

この戦略には、事業上の一貫した狙いがある。顧客情報、データ管理、コンテンツ、サービス対応エージェントを組み合わせ、顧客がセールスフォースの製品内でより多くの業務を自動化できるようにすることだ。買収はその拡大を速め、買収先の既存顧客も取り込める。成否を決めるのは、それらの顧客が追加の有料サービスを十分に購入し、増加する計算処理、販売、統合の費用を賄えるかどうかである。

セールスフォースは十分な手元資金を持ち、2028年3月より前に資金調達債務の元本返済期限もないため、取り組みを進める時間がある。ただし、借り入れで賄った自社株買いによって継続的な利払いが増え、買収にもさらに現金が必要となる。進展を最も明確に示すのは、買収した製品の統合が進むにつれ、顧客との取引から得る営業利益と現金が増えることである。それこそが、拡大した製品・事業群とその資金調達費用を支えられる事業上の成果となる。

計算上の注記と提出書類の情報

  • 提出書類: セールスフォース、CIK 0001108524;フォーム10-Q;受付番号0001108524-26-000190;提出日2026年8月27日;対象期間の末日2026年7月31日。2027会計年度は2027年1月31日に終了する。出典:SEC提出書類一覧の受付番号0001108524-26-000190に対応する提出書類の基本情報。
  • 数値の照合: 連結売上高、営業利益、純利益、営業キャッシュフロー、資産、負債、資本、現金をSEC企業財務データと照合した。対象の受付番号、米ドル単位、対応する時点または期間のデータを使った。過去の第2四半期の数値には5月から7月までの期間を使い、会計年度の合計や暦上の期間ラベルだけでは判断していない。
  • 成長率と利益率: 成長率は、当期の金額を比較対象となる前年同期の金額で割り、1を引いて求める。利益率は、対象の利益を連結売上高で割って求める。インフォマティカだけを除いた四半期の成長率は(11,345 − 456) / 10,236 − 1 = 6.38%、上半期の成長率は(22,478 − 900) / 20,065 − 1 = 7.54%となる。四半期の売上増加額のうち、インフォマティカがもたらした割合は456 / 1,109 = 41.1%だった。これらは計算で求めた指標であり、会社が公表した買収の影響を除く成長率ではない。
  • キャッシュフローの照合: 上半期の営業に関わる資産と負債の変動額は、合計6億2,100万ドルとなる:8,035 − 1,057 + 510 − 1,006 − 285 − 5,576。これに純利益と、第4節で説明した現金の出入りを伴わない4項目の調整を加えると、79億7,000万ドルに一致する。フリーキャッシュフローは7,970 − 316 = 7,654で、比較対象期間は7,216 − 314 = 6,902だった。単位は百万米ドル。純利益からの調整では、販売手数料に関する二つの項目を差し引くと1,173 − 1,057 = +116となる。
  • 社債の利払い: 新規社債の元本と利率の組み合わせは、元本を百万米ドル、利率をパーセントで示すと、3,500/4.50、4,250/4.65、3,750/4.90、2,750/5.20、4,500/5.55、1,500/6.40、3,750/6.55、1,000/6.70となる。それぞれの元本に利率を掛けた金額の合計は、年間13億4,025万ドルとなる。既存の固定金利社債の元本と利率の組み合わせは、同じ単位で1,500/3.70、1,000/1.50、1,500/1.95、1,250/2.70、2,000/2.90、1,250/3.05となる。これによる年間2億2,962万5,000ドルを加えると、固定金利社債の利払い総額は15億6,987万5,000ドルとなる。いずれの合計にも、期限付き借入金の利息、社債発行費用を期間ごとに費用に計上する償却額、ファイナンス・リースの利息は含まない。
  • 資本: 単位を百万米ドルとすると、59,142 + 320 − 327 − 27,360 + 1,767 − 50 − 747 + 5,633 = 38,378となる。これらは株主資本等変動計算書の記載額である。株式報酬により資本に加算された17億6,700万ドルは、費用として計上され、キャッシュフロー計算で足し戻された17億6,300万ドルとは異なる。払込資本は68,835 + 320 − 327 − 4,566 + 1,767 = 66,029と照合できる。決議された配当額7億4,700万ドルは、現金で支払った7億2,900万ドルとは異なる。同様に、自社株買いについて資本に記載された金額も、実際の現金支払額とは異なる。どちらの時点でも、負債と資本の合計は資産に一致する:71,242 + 38,378 = 109,620、53,163 + 59,142 = 112,305。

本レポートは情報提供と事業分析のみを目的としており、投資助言ではない。

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