アドバンスト・マイクロ・デバイセズ (AMD) 2026年度第2四半期:膨らむ購入契約上の支払い義務
AMDの2026年度第2四半期の開示資料によると、無条件で支払う義務のある購入契約の残高は$30.3 billionで、現金と短期投資の合計$13.1 billionを上回ります。このうち$17.4 billionは2026年度の残りの期間に支払期限を迎えます。そのため、目先の支払い予定が資金確保を考えるうえで重要になります。人工知能(AI)事業の拡大に伴い、本業で生み出す現金は増えていますが、将来の支払いも増えています。ただし、この比較だけで資金不足とはいえません。AMDには今後も顧客からの入金があり、借り入れも利用できます。半導体を設計する同社への投資を考える際は、チップの売上だけでなく、それを支える設備や基盤にも目を向ける必要があります。 第2四半期報告書(10-Q)、注記9–10および資金繰りの説明
この分析では、Mは百万、Bは十億、FYは会計年度、H1は最初の半年間を表します。金額は米ドル建てです。増減、利益率、残高の合計、その他の比率は、経営陣による説明と明記したものを除き、引用した開示資料から計算しています。
1. 将来の支払い義務は比較的小さい社債残高を上回る
AMDが負う支払い義務は、社債の元本、つまり利息を含まない借入額$3.25Bを大きく上回ります。
1-1. 現金が減る一方、投資と建設中の資産が増加
現金は短期投資と合わせて見る必要があります。現金残高が減っただけでは、すぐに使える資金の合計が減ったとはいえません。両者の合計残高は$10,552Mから$13,111Mに増えました。
| 項目($M) | 2025年12月27日 | 2026年6月27日 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 現金およびすぐに現金に換えられる資産 | 5,539 | 5,086 | −8.2% |
| 短期投資 | 5,013 | 8,025 | +60.1% |
| 売掛金(顧客からまだ受け取っていない販売代金) | 6,315 | 7,281 | +15.3% |
| 在庫 | 7,920 | 8,468 | +6.9% |
| 建物・設備など(減価償却などを差し引いた額) | 2,312 | 3,439 | +48.7% |
| 買収で取得した無形資産(技術など形のない資産、償却などを差し引いた額) | 16,705 | 15,635 | −6.4% |
経営陣によると、顧客からまだ代金を受け取っていない売上に当たる売掛金は、売上の拡大に伴って増えました。在庫が増えた主な理由は、まだ完成していない製品の増加です。製造途中の製品は$4,768Mから$5,265Mに増えました。建設中の資産は$508Mから$1,148Mに増えており、使用開始に向けて準備中の資産への支出を示しています。買収で取得した技術や顧客との関係などの無形資産は、取得費用を時間の経過とともに利益から差し引くことで減少しました。 第2四半期報告書(10-Q)、貸借対照表、注記3および現金の説明
1-2. 事業拡大に伴い未払い額も増加
社債の元本は$3,250Mで変わりませんでした。一方、仕入先への未払い代金である買掛金と、発生済みで未払いの費用などの合計は、計算上$8,179Mから$10,905Mに増えました。こうした事業上の支払い義務には、未払いの仕入代金や、すでに発生した費用が含まれます。社債元本のうち46.2%は今後3年以内に返済期限を迎えます。計算式は($875M + $625M)/ $3,250Mです。各社債の元本額に応じて重みを付けた契約上の平均金利は3.8%です。現在の貸借対照表にはリースで使う資産とその支払い義務が含まれています。ただし、まだ利用が始まっていないリース契約により、将来必要な現金支払いがさらに生じます。
AMDは$5.0Bの借入枠も確保しており、四半期末時点で利用残高はありませんでした。これは契約条件の範囲内で借り入れ、返済、再借り入れができる仕組みです。資金調達の選択肢にはなりますが、利用すれば負債が増えます。本業から現金を生み出すこととは異なります。 第2四半期報告書(10-Q)、貸借対照表および注記9–10
1-3. 自社株の消却で利益剰余金が減少
利益剰余金は、過去の利益のうち会社に残した累計額です。上半期に$3,680Mの利益を上げたにもかかわらず、$6,699Mから$5,909Mに減少しました。以前に買い戻した自社株を消却した、つまり発行済み株式からなくしたことで、利益剰余金が$4,470M減りました。この会計上の振り替えによって、新たに現金が流出したわけではありません。
株式の額面を上回って払い込まれた金額を記録する追加払込資本は、$63,365Mから$61,373Mに減りました。買い戻した自社株による資本からの控除はなくなりました。一方、純利益に含めずに記録する特定の損益の累計であるその他の包括損失累計額は、$3Mから$74Mに増えました。それでも、資産から負債を差し引いた資本の合計は$62,999Mから$67,224Mに増加しました。総資産$84,464Mは、計算で求めた負債$17,240Mとこの資本の合計に一致します。 第2四半期報告書(10-Q)、貸借対照表、資本変動計算書および注記12
2. 本業は確かに回復しているが、比較対象の前年は落ち込んでいた
AMDが本業から得た利益は大幅に増えました。ただし、比較対象の前年同期は輸出規制によって利益が押し下げられていました。
2-1. 前年の在庫関連費用がなくなった効果を超えて利益が改善
本業から得た利益を示す営業利益の行を見ると、その下で反映される投資利益や税金の影響と、本業の回復を分けて確認できます。数値は、AMDが財務諸表で使う会計ルールである米国会計基準(GAAP)に基づいています。希薄化後1株当たり利益(EPS)は、会計ルール上含める必要がある将来増える可能性のある株式も加えた平均株式数で、利益を割ったものです。
| 米国会計基準による指標($M、利益率とEPSを除く) | 2025年度第2四半期 | 2026年度第2四半期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,685 | 11,536 |
| 営業利益/(損失) | −134 | 1,990 |
| 営業利益率(売上のうち本業の利益として残る割合) | −1.7% | 17.3% |
| 純利益(税金なども差し引いた最終的な利益) | 872 | 2,297 |
| 純利益率(売上のうち最終的な利益として残る割合) | 11.3% | 19.9% |
| 希薄化後EPS($) | 0.54 | 1.38 |
| 潜在的な追加株式を含め、期間に応じて重みを付けた平均株式数(百万株) | 1,630 | 1,659 |
営業利益率は、売上から本業にかかる費用を差し引いた後に残る割合です。−$134M / $7,685Mから$1,990M / $11,536Mへと変わりました。純利益率は、税金やその他の項目も反映した後に残る割合を示します。
データセンター向けAIチップ「MI308」の輸出規制に伴う約$800Mの在庫および関連費用だけを除くと、前年同期の営業利益は試算で約$666Mになります。これは米国会計基準に基づく公表値ではありません。この調整後の値と比べると、今期の営業利益は約198.8%増え、売上高の伸び率50.1%を上回りました。この計算では、株式による報酬費用や、買収した無形資産の取得費用を少しずつ利益から差し引く償却費用を除いていません。継続的に得られる利益の予測を示すものではありません。 第2四半期財務諸表; 2025年度年次報告書(10-K)、輸出規制の説明; AMD第2四半期決算発表
その他の収益は$98Mから$598Mに増えました。主な理由は、非上場だった投資先企業が上場した際に、投資の価値が上がったことです。この利益はチップ販売による利益ではなく、同額の現金を受け取ったわけでもありません。一方、前年同期の$834Mの税金による利益押し上げ効果は、今期には$252Mの税金費用に変わりました。前年の押し上げ効果には、多額の一時的な項目が含まれていました。米国内国歳入庁が税負担の軽減を承認したため、AMDは税金の支払い義務が確定していなかった分について、あらかじめ計上していた金額を取り崩しました。この取り崩しは前年同期の純利益を押し上げましたが、チップ販売の利益の出やすさが改善したわけではありません。 第2四半期報告書(10-Q)、財務諸表、注記13および事業業績の説明; AMD第2四半期決算発表、税金の調整に関する注記
希薄化後EPSは、純利益を潜在的な追加株式も含めた株式数で割った値です。表にはAMDが公表したEPSを記載しています。百万単位に丸めた数値から計算しても、完全には一致しない場合があります。自社株買いを行ったものの株式数は増えたため、EPSの伸びは抑えられました。 第2四半期報告書(10-Q)、財務諸表および注記11
2-2. 売上の伸びが開発費の増加を吸収したが、すべての事業ではない
研究開発費は$1,894Mから$2,528Mに増えました。主な理由は従業員の増加です。上記の売上高を使って計算すると、売上に占める割合は24.6%から21.9%に下がりました。開示資料には、比較的変わらない費用と、売上に応じて変動する費用を確実に分けられる情報はありません。先ほどの費用調整後の値と比べると、営業利益の伸び率は売上高の伸び率の約4倍でした。これは過去の関係であり、今後の費用の動きを予測するものではありません。 第2四半期報告書(10-Q)、費用の説明
事業部門別の表を見ると、グループ全体の利益が増えても、すべての部門で改善したとはいえない理由が分かります。
| 事業部門($M) | 2025年度第2四半期売上高 | 2026年度第2四半期売上高 | 2025年度第2四半期営業利益/(損失) | 2026年度第2四半期営業利益 |
|---|---|---|---|---|
| データセンター | 3,240 | 6,718 | −155 | 2,103 |
| クライアント・ゲーミング | 3,621 | 3,841 | 767 | 582 |
| 組み込み機器向け | 824 | 977 | 275 | 386 |
これらの利益には、株式による報酬費用や買収に伴う償却費用など、AMDが個々の部門に割り当てていない費用は含まれていません。$2,103M + $582M + $386Mから、部門に割り当てていない費用$1,081Mを差し引くと、グループ全体の営業利益$1,990Mになります。データセンター部門は現在、売上高の58.2%を占めています。計算式は$6,718M / $11,536Mです。クライアント・ゲーミング部門は、本業にかかる費用が増えたため減益となりました。 第2四半期報告書(10-Q)、注記4および事業部門別の説明
3. 未払い額の増加にも支えられ、生み出す現金が増加
本業で生み出す現金は増えましたが、仕入先への支払い時期もその結果を支えました。
継続する事業の行では、AMDがその後売却した製造事業から生まれた現金を除いています。
| 現金収支の指標($M、百万ドル) | 2025年度上半期 | 2026年度上半期 | 増減($M、百万ドル) |
|---|---|---|---|
| 事業活動で得た現金、全体 | 2,950 | 5,321 | +2,371 |
| 事業活動で得た現金、継続している事業 | 2,401 | 5,321 | +2,920 |
| 投資による現金収支、全体 | −2,655 | −5,415 | −2,760 |
| 資金調達・返済などによる現金収支、全体 | 347 | −365 | −712 |
| 期末の現金残高、使用が制限された現金を含む | 4,453 | 5,097 | +644 |
| 設備投資額、継続している事業 | 494 | 1,197 | +703 |
| 設備投資後に残る現金(フリーキャッシュフロー)、継続している事業、計算値 | 1,907 | 4,124 | +2,217 |
ここでのフリーキャッシュフローは、事業活動で得た現金から設備や不動産の購入額を引いたものです。今期は$5,321M − $1,197M、前期は$2,401M − $494Mです。これらの購入後に残る現金を示しており、買収や自社株買いなどへの支出はまだ差し引いていません。仕入先への未払い代金の増加は、今期の事業活動で得た現金を$2,170M押し上げました。前期の押し上げ額は$547Mでした。一方、売上代金の未回収分、在庫、前払い費用・その他の資産には、それぞれ$966M、$548M、$991Mの現金が使われました。提出書類では、未払い代金の増加は主に支払い時期によるものと説明しています。このため、代金を支払う際には、現金を押し上げた効果が逆転する可能性があります。第2四半期報告書(10-Q)、現金収支の計算書と支払い能力に関する説明
設備投資額は上半期売上高の5.5%($1,197M / $21,789M)に達しました。既存資産を維持するための支出と、事業を拡大するための支出は分けて開示されていません。自社株買いには$221M、従業員に付与した株式に関する源泉徴収税の支払いには$341Mが使われ、新たな借り入れによる資金流入はありませんでした。事業活動で得た現金の計算で足し戻された株式報酬費用は$990Mで、上半期売上高の4.5%に相当します。この費用はすぐに現金で支払う必要がありません。ただし、株式が追加で発行されると、既存株主の保有割合が下がる可能性があります。第2四半期報告書(10-Q)、現金収支の計算書と注記12
4. AIの好調さと併存する景気循環による弱さ、契約上の負担リスク
事業は拡大していますが、市場ごとに動きの速さは異なります。
年間実績と比べると、直近の営業利益率、つまり売上高のうち本業の利益として残る割合は、近年の平均を上回っています。ただし、好調な四半期の水準がずっと続くとみなしているわけではありません。
| グループ全体の指標(比率を除き$M、百万ドル) | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 16,434 | 23,601 | 22,680 | 25,785 | 34,639 |
| 本業で得た利益(営業利益) | 3,648 | 1,264 | 401 | 1,900 | 3,694 |
| 営業利益率 | 22.2% | 5.4% | 1.8% | 7.4% | 10.7% |
| 費用や税金などを差し引いた最終利益(純利益) | 3,162 | 1,320 | 854 | 1,641 | 4,335 |
| 売上高に占める純利益の割合 | 19.2% | 5.6% | 3.8% | 6.4% | 12.5% |
| 事業活動で得た現金、全体 | — | — | 1,667 | 3,041 | 7,709 |
| 事業活動で得た現金 / 純利益 | — | — | 1.95× | 1.85× | 1.78× |
5年間の営業利益率の単純平均は9.5%でした。この期間で最も低かったのは2023年度の1.8%です。買収と、それに伴って資産の取得費用を各期に分けて計上する償却の影響があるため、各年をそのまま比較するには限界があります。2022年度から2025年度までの3年間の年平均成長率は、売上高が13.6%、営業利益が43.0%、純利益が48.6%でした。計算式は(終了時の値 / 開始時の値)^(1/3) − 1です。これらは、開始時の数値から終了時の数値に達するまで、毎年同じ割合で成長したと仮定した場合の伸び率を示します。
2025年度の継続している事業では、純利益に対する事業活動で得た現金の倍率は$6,493M / $4,269M = 1.52×で、全体の倍率を下回りました。つまり、継続している事業は、純利益の1ドル当たり約$1.52の現金を事業活動から生み出しました。2023年度年次報告書(10-K)、財務諸表、54–58ページ;2025年度年次報告書(10-K)、財務諸表、58–62ページ
現在の回復局面では、四半期のパソコン向けプロセッサー出荷数が前年同期比34%増えましたが、平均販売価格は6%下がりました。ゲーム向け売上高は$1,122Mから$779Mに減少しました。在庫$8,468Mのうち$5,265Mはまだ生産途中です。そのため、これらを販売できる製品に仕上げられるかが、事業の遂行状況を測る重要な指標となります。これらの動きが示しているのは、AIが主導する拡大であり、半導体市場全体が一様に上向いているわけではありません。第2四半期報告書(10-Q)、注記3と事業部門別の説明
条件が付かず履行が必要な契約上の購入義務は、計算上148.9%増加し、年度末の$12,166Mから$30,276Mとなりました。このうち$17,386Mは2026年度の残りの期間に支払い期限を迎えます。対象は部品、クラウドの利用容量、ソフトウェアや技術の利用権です。一部のクラウド契約の義務は、提供会社が容量を減らしたり、別の利用者に振り向けたりした場合に縮小することがあります。これらは将来の購入に関する契約であり、すべてが現時点で負債として計上されているわけではありません。2025年度年次報告書(10-K)、注記12;第2四半期報告書(10-Q)、注記10
このほかに、まだ利用が始まっていないリース契約$4.5Bと、提携先のリース契約に対する最大$4.1Bの保証による負担リスクがあります。この保証は通常、提携先が支払いなどの義務を果たせなくなった場合に支払いが必要になります。四半期末後、AMDはさらに$9.5Bのリース契約と、最大$5.0Bの条件付き投資契約を結びました。それぞれ支払いが必要になる条件や時期が異なるため、合計額をすぐに支払うべき負債とみなすことはできません。経営陣は、発生する可能性が合理的に考えられる訴訟損失について、重大な金額にはならない見込みだとしています。第2四半期報告書(10-Q)、注記8と10
AMDが7月に発表したHeliosは、AIの計算に必要な機能をまとめたシステムです。この発表は、事業拡大の背景にある商機を示しています。ただし、オープンAIとメタに付与されたワラント、つまり条件付きで株式を購入できる権利は、定められた条件を満たすと、それぞれ最大160M株のAMD株式を購入できるものです。四半期末時点では、いずれも権利が確定していませんでした。これは、権利を得るための条件がまだ満たされていなかったことを意味します。今後の顧客による購入と、その他の必要条件がそろえば、ワラントを行使できるようになる可能性があります。行使に伴って新株が発行されれば、関連する売上獲得の機会が生まれる一方で、既存株主の保有割合は下がります。AMDの製品発表;第2四半期報告書(10-Q)、注記12
5. 顧客からの現金収入が契約上の支払い義務に追いつく必要がある
AMDの次の課題は、AI事業の拡大を、仕入先への支払いやインフラ投資を賄った後にも現金が残る形につなげることです。データセンター事業の成長と利益率の回復がこれを支えています。一方、ゲーム向け需要の弱さや、条件付きで顧客に与える特典が課題を複雑にしています。現在の資金配分は、自社株買いよりも供給能力の拡充や戦略的な投資を優先しています。顧客の購入が予定どおり進み、仕入先への代金の後払いを無理なく管理できれば、事業活動で得た現金で拡大資金をより多く賄えます。購入が遅れれば、手元資金や借り入れへの依存が高まります。
出典:2026年6月27日に終了した四半期について、2026年8月5日に提出された米国証券取引委員会(SEC)の四半期報告書Form 10-Q。受理番号0000002488-26-000123。過去との比較には2025年度と2023年度の年次報告書Form 10-Kを使用しています。
この分析は、米国証券取引委員会に提出された書類に基づくもので、情報提供のみを目的としています。投資助言ではありません。